
建設業にもAIの波が押し寄せています。
設計、施工計画、工程管理、写真整理、書類作成など、これからAIが活躍する場面はますます増えていくでしょう。
私はAIを建設業で活用することには大賛成です。
安全管理にも、AIを積極的に活用すればよいと思っています。
しかし、最近目にする「AI危険予知」という言葉には、少し違和感があります。
危険予知そのものをAIにさせてしまって、本当にいいのでしょうか。
人間は統計が得意ではない
AIには、人間よりはるかに得意なことがあります。
その一つが、大量の情報を処理して傾向を見つけることです。
例えば、過去の建設災害を分析して、
「この工事では、どのような災害が多いのか」
「この工程では、どのような事故が発生しやすいのか」
「どのような条件が重なったときに災害が増えるのか」
といった情報を導き出すことです。
これはAIに任せればよいと思います。
人間のリスク認知は必ずしも統計的に正確ではありません。
最近見聞きした事故や、強く印象に残った事故を実際以上に大きなリスクだと感じることがあります。
反対に、日常的に繰り返している身近な危険については、リスクを小さく感じてしまうことがあります。
だからこそ、過去の災害データを客観的に分析するところでは、AIの能力を大いに利用すればよいのです。
しかし、建設現場は千差万別
問題は、その先です。
建設現場には、
一つとして同じ現場はありません。
建物が違う。
地形が違う。
作業員が違う。
協力会社が違う。
使用する重機が違う。
周辺環境も違います。
さらに同じ現場であっても、昨日と今日では違います。
昨日まで何もなかった場所に資材が置かれているかもしれません。
工程が進んで開口部ができているかもしれません。
雨によって地盤が軟らかくなっているかもしれません。
新人が入っているかもしれません。
重機のオペレーターが交代しているかもしれません。
そして、人間の体調や心理状態も毎日違います。
AIが過去のデータから、
「この工程では重機との接触災害が多い」
と教えてくれる。
これは非常に有益な情報です。
しかし、
「では、今日、この現場のどこが危ないのか」
を考えるところから、本当の危険予知が始まります。
AI危険予知ではなく「AI分析から行う危険予知」
ここを明確に区別したいと思います。
私は、
「AI危険予知」ではなく、
「AI分析から行う危険予知」
と考えた方がよいと思っています。
AIの仕事は、
過去から「何が起こりやすいか」を示すこと。
人間の仕事は、
現在の現場を見て「今日、何が起こり得るか」を考えること。
です。
例えばAIが、
「この工程ではバックホウと作業員との接触災害が多い」
と示したとします。
そこで現場の人間が実際の作業場所を見る。
「今日は資材がここに置いてある」
「昨日より通路が狭い」
「バックホウから作業員が見えにくいな」
「誘導員の立つ位置も悪い」
ここまで考えて初めて、今日の現場の危険になります。
KYの目的は「答えを出すこと」だけではない
危険予知活動の目的をもう一度考える必要があります。
KYは、危険項目をたくさん挙げればよい活動ではありません。
大切なのは、
作業を始める前に、自分たちで現場を見て、考え、話し合うことです。
もしAIが、
「本日の危険ポイントは①墜落、②飛来落下、③重機との接触です」
と答えを出し、それを朝礼で読み上げるだけになったらどうでしょう。
形式的にはKYを行っています。
しかし、人間は考えなくなっています。
それでは本末転倒です。
AIが便利になればなるほど、私たちはこの問題を意識する必要があります。
AIは危険予知の材料を提供する
AIを安全管理から排除する必要はありません。
むしろ積極的に使うべきです。
ただし、役割を間違えてはいけません。
AIは「危険を予知する人」ではありません。
危険を予知する人に、考えるための材料を提供する道具です。
AI分析
↓
現場を見る
↓
違いに気づく
↓
人が考える
↓
仲間と話す
↓
判断する
↓
行動する
この流れが重要です。
AIが発達したから人間が考えなくてもよくなるのではありません。
AIが得意なことを任せることで、人間は「今日、この現場はどうなのか」を考えることに集中できる。
これこそ、建設業におけるAIの有効な使い方ではないでしょうか。
次回は、さらにSafety-IIへ話を戻します。
AIが進歩する時代に、人間には何が求められるのか。
私はそこに、Safety-IIが重視する人間のレジリエンスがあると考えています。