
「日本人ファースト」――参政党が堂々と掲げるこのスローガンに、私は背筋が凍る思いを覚える。
「アメリカファースト」に倣ったのだろうが、トランプのように経済大国を背景にした孤立主義とはわけが違う。日本はすでに衰退途上国に足を突っ込んでいる。そんな国が掲げる「自国優先」は、ただの“閉鎖的排外主義”に過ぎない。
●「日本人ファースト」とは誰のための言葉か
この言葉の裏には、「外国人は日本人の敵」という無言のメッセージが込められている。
確かに、一部の中国人が土地を買い占め、法をかいくぐって民泊や建築を始める例がある。
それは制度の問題であり、行政の怠慢である。中国人が悪いのではない。
それを「外国人一般」への不信にすり替えるのは、極めて卑怯だ。
参政党の議員の中には「日本人の賃金が上がらないのは、安い外国人実習生のせいだ」と主張する者までいる。
まったくの的外れ。実習生は低賃金・長時間労働というブラック労働の犠牲者だ。
その現実に手を加えず、矛先を彼らに向けるのは、“弱者をスケープゴートにする”最も醜い政治の姿である。
●「不満の感情」を煽るポピュリズム
「自分たちが苦しいのは、外国人のせいだ」と思わせるのは、極右の常套手段だ。
かつてのナチスがそうだった。「ユダヤ人がドイツ経済を壊した」と嘘を広め、大衆の怒りを操った。
参政党はまさにそれを模倣している。
煽り、焚きつけ、怒らせる。
「あなたは悪くない。悪いのは外人だ」――そんな心理的操作で票を集める政治に、我々は未来を託せるのか?
●「実習生なしでは回らない」日本の現実
建設現場、農業、介護、製造業――日本のあらゆる現場は外国人抜きでは回らない。
とりわけ技能実習制度は“名ばかり教育制度”として批判されながらも、実態は労働力供給制度である。
それでも彼らが働きに来てくれるのは、母国の家族のためであり、生活のためだ。
日本人がやりたがらない仕事を、彼らが担ってくれている現実を直視すべきだ。
なのに、参政党の議員は「外国人を制限すれば、日本人の賃金が上がる」などという幼稚なロジックを本気で語る。
これを“政治”と呼べるのか?
もはや“怒れる居酒屋のオヤジの放言”レベルである。
●「日本人を守る」と言いながら、日本人を愚弄している
参政党のスローガンには、重大な欺瞞がある。
「日本人を守る」と言いながら、その実、日本人をバカにしている。
彼らはこう思っているのだろう――
「難しい経済の話をしてもわからないから、“外人が悪い”って言っとけばウケるだろ」
そんな見え透いた心理操作を、見抜けないと思っている。
しかし、我々日本人はそこまで愚かではない。
むしろ今こそ、「ファースト」にすべきは“理性”であり“共生”だ。
外国人と共に働き、支え合い、多様性の中に活力を見いだす。
それこそが衰退する日本に必要な、未来への道である。