
―「自分の子どもには勧められない仕事」でいいのか?―
先日、あるアンケートの結果に、心が痛みました。
「あなたは、自分の子どもに建設業で働いて欲しいと思いますか?」
この問いに対し、多くの職長が「NO」と答えたのです。
誰よりも現場を知る人たちが、「自分の子にはさせたくない」と思っている。
これが、現場の“本音”であり、建設業の現実なのです。
目次
■ 誰も“良い”と思っていない現場に、人は来ない
若者の建設業離れは、意識の問題でも価値観の変化でもありません。
現場で働いている人が「良い仕事」と思えていないことこそが、最大の原因です。
- 給与水準は、同世代の一般製造業以下
- 土日休みはおろか、週休1日も守られない
- 危険・重労働・不安定な立場
- 正社員ではなく1人親方という名の個人請負化
- 現場で起きる事故への責任は、結局「自己責任」
これで「やりがいがあります」「誇りある仕事です」と若者に勧められるでしょうか?
■ 魅力ある建設業の第一歩は、“当たり前”から
建設業に人を呼び戻すには、特別なキャンペーンやイメージ戦略の前に、
まず「人として当たり前のこと」を整えるべきです。
- 一般製造業並みの給与水準(年収400万円台を下回らない)
- 週休2日制の徹底(土日が休み、それが予定通り守られる)
- 安心して継続できる雇用形態(正社員登用や社会保険の完全適用)
ここからがスタートであり、
ようやく「魅力ある職場」の入り口に立てるのだと考えます。
■ 建設業に対する“無意識の差別”にも目を向けて
ニュース報道でのこんな違和感に、お気づきでしょうか?
- 事件の加害者や被害者が建設業に属していた場合 →「建設作業員」
- 一般企業の社員であった場合 →「会社員」「会社従業員」
同じ労働者でありながら、「建設作業員」という言葉にはどこか“負の印象”が漂います。
これは明らかに社会全体が抱える“無意識の差別”ではないでしょうか?
建設作業員は、「道」を作り、「橋」を架け、「家」を建て、「街」を整えています。
人々が安心して暮らすための“インフラのすべて”を担っている職種なのです。
■ なぜもっと、建設作業員を尊敬しないのか?
災害時、誰よりも先に現場に駆けつけるのは誰ですか?
鉄筋の中で、真夏の高所で、極寒の雪の中で、
一人ひとりが命を守る“最後の砦”として働いている人たちが、建設作業員です。
その現実を知らない人たちが、
「ブルーカラー」だとか「現場仕事はきついだけ」だとか
“下に見る”感覚を抱くならば――
私たちは一度、暮らしの原点を見直すべきです。
■ 今こそ、社会全体が「現場にリスペクト」を
建設業界の人材不足は、建設業界だけの問題ではありません。
それは、日本社会の“骨”が痩せ細っていく、危機的なサインです。
- メディアは「建設作業員」の肩書に敬意を。
- 企業は「人が集まる職場」に本気で変える努力を。
- 教育は「現場の誇り」を子どもたちに伝える視点を。
- 私たち市民も「インフラを支える人々」への敬意を持つことを。
■ 結びに
「子どもに勧めたい仕事だ」と
胸を張って言える建設業に、私たちは変えていかなければなりません。
それは、「現場の人間」だけがやるべきことではありません。
社会全体が、“現場”と“そこで働く人々”に、リスペクトを持つことから始まります。
道をつくる人を、道の上から見下ろす社会に未来はありません。