
近年、化学物質管理は「国が決める時代」から「事業者が自律的に管理する時代」へと大きく舵を切っています。
厚生労働省は、指定化学物質に対して許容濃度を設定・選定し、最新情報を順次公表しています。事業者にはその情報を踏まえたリスクアセスメントの実施が義務付けられており、これが安全衛生管理の基本になりつつあります。
クリエイトシンプルとは?
厚生労働省が提供する「クリエイトシンプル」は、化学物質のリスクアセスメントを簡便に行うための専用ツールです。指定物質の増加や法改正に合わせて継続的にバージョンアップされており、令和7年7月に最新版となるver3.1.2が公開されました。
大きな進化 ― 複数物質を同時に評価可能に
当初のクリエイトシンプルでは、1回のリスクアセスメントにつき1物質のみの評価が可能でした。そのため、多種類の化学物質を扱う現場では「最も影響が大きい物質」を選別し、優先的に評価せざるを得ませんでした。
ところが、新しい ver3.1.2では複数の物質を同時にリスクアセスメントでき、かつ許容濃度等の参考値がSDS以上に記載されています。これにより、実際の使用状況に即した形で、包括的に化学物質リスクを洗い出すことが可能になったのです。
再実施の必要性
法律上、使用する化学物質の成分構成や使用方法に変化がない場合は、再度リスクアセスメントを行う必要はありません。
しかし、新バージョンのクリエイトシンプルを活用すれば、使用中のすべての物質を一度に把握できるため、より現場の実態に即した評価が可能となります。
これは単に「義務を果たす」という段階を超えて、事業者自らが主体的に安全を高める大きなチャンスだといえるでしょう。
まとめ
- 化学物質管理は自律的管理へシフト
- 厚労省が許容濃度などを整備、事業者は最新情報を反映してリスクアセスメントを実施
- クリエイトシンプルver3.1.2では複数物質を一括評価可能に
- 成分や使用法に変化がなくても、最新版で再評価することを強く推奨
今後も指定物質は増えていく見込みです。
「最新のツールを使いこなすこと」こそが、これからの化学物質管理のスタンダードになります。