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「秋が来たのにススキが咲かない? ― 2025年の“遅い秋”を読み解く」

ブログ

2025.10.05

 お月見のころ、風に揺れるススキの穂を眺めるのは、秋の楽しみのひとつです。
ところが今年(2025年)は、そのススキの穂がなかなか姿を見せませんでした。ようやく見ごろを迎えたのは10月に入ってから。昨年との違いを覚えている方はおられますか。


■ 昨年(2024年)は9月に咲いていた

 昨年のことを思い返すと、9月のお月見のころにはすでにススキが開花していました。
実際、気象庁のデータでも2024年の9月中旬は一時的に気温が落ち着き、秋らしい風が吹いていました。
この「一時的な涼しさ」をススキは敏感に感じ取り、「そろそろ秋だ」と花を咲かせたのです。

しかし、その後の10月。
全国的に気温が急上昇し、10月としては観測史上1位の高温を記録しました。
東京では真夏日が再び現れ、西日本・東日本ともに平年より2℃以上高い気温が続きました。

つまり昨年は、

「9月に秋が来て、10月に夏が戻った」
という、季節が逆戻りしたような年でした。


■ 今年(2025年)は“秋が来ない”9月

一方、今年はまったく逆の現象が起きました。
2025年の夏は観測史上最も暑く、全国平均で平年より2.3℃も高いという猛暑でした。
9月に入っても夜の気温が下がらず、いわゆる「熱帯夜」が続いた地域も少なくありません。

ススキは日照時間が短くなることで「花芽分化(花の準備)」を始めますが、
開花には一定の涼しさが必要です。
ところが今年はその涼しさが訪れず、植物が「秋が来た」と感じるタイミングを逃してしまったのです。

結果として、

「ススキの開花が10月まで遅れた」
という現象が全国的に見られました。


■ ススキは“季節のリズム”を映す植物

ススキの開花には、次の二つの条件が重要だとされています。

  1. 日照時間の減少(短日反応)
     ― 昼が短くなると、花芽ができ始める。
  2. 気温の低下と昼夜の温度差
     ― 夜が涼しくなることで、花が咲く準備が整う。

つまり、今年のように残暑が長引き夜も暑い日が続くと、
ススキは「秋になった」と判断できず、花を咲かせる時期を逃してしまうのです。


■ 昨年と今年の違いを整理すると

年度9月の気温傾向10月の気温傾向ススキの開花時期
2024年一時的に涼しく秋を感じる記録的な高温(夏の戻り)9月中旬~下旬(お月見頃)
2025年猛暑続きで夜も暑いようやく平年並みに落ち着く10月上旬(やや遅れ)

■ “季節の感覚”がずれていく中で

 今年のススキの遅咲きは、単なる自然の気まぐれではなく、
気温の下がる「タイミングのずれ」によるものです。

人間も「秋らしくない」と感じていましたが、
ススキも同じように戸惑っていたのかもしれません。
それでも、ようやく秋風が夜を包み始めると、一斉に穂を伸ばし、
太陽の光を受けて銀色に輝き始めました。

植物は、私たち以上に気候の変化に敏感です。
季節のリズムが少しずつ変わり始めている今、
ススキの穂が教えてくれる“遅い秋”のサインに、
耳を傾けたいものです。


■ まとめ

🌾 昨年は「秋が早く来て夏が戻った」
🌾 今年は「夏が長く続き秋が遅れた」

同じ「暑い年」でも、気温が下がるタイミングの違いが、
自然界のリズムをこれほど左右するのです。

来年の秋、ススキはどんなタイミングで咲くだろうか。
季節の移ろいを確かめるように、またお月見のころ、
風に揺れる穂を見上げてみたいと思います。

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