
お月見のころ、風に揺れるススキの穂を眺めるのは、秋の楽しみのひとつです。
ところが今年(2025年)は、そのススキの穂がなかなか姿を見せませんでした。ようやく見ごろを迎えたのは10月に入ってから。昨年との違いを覚えている方はおられますか。
目次
■ 昨年(2024年)は9月に咲いていた
昨年のことを思い返すと、9月のお月見のころにはすでにススキが開花していました。
実際、気象庁のデータでも2024年の9月中旬は一時的に気温が落ち着き、秋らしい風が吹いていました。
この「一時的な涼しさ」をススキは敏感に感じ取り、「そろそろ秋だ」と花を咲かせたのです。
しかし、その後の10月。
全国的に気温が急上昇し、10月としては観測史上1位の高温を記録しました。
東京では真夏日が再び現れ、西日本・東日本ともに平年より2℃以上高い気温が続きました。
つまり昨年は、
「9月に秋が来て、10月に夏が戻った」
という、季節が逆戻りしたような年でした。
■ 今年(2025年)は“秋が来ない”9月
一方、今年はまったく逆の現象が起きました。
2025年の夏は観測史上最も暑く、全国平均で平年より2.3℃も高いという猛暑でした。
9月に入っても夜の気温が下がらず、いわゆる「熱帯夜」が続いた地域も少なくありません。
ススキは日照時間が短くなることで「花芽分化(花の準備)」を始めますが、
開花には一定の涼しさが必要です。
ところが今年はその涼しさが訪れず、植物が「秋が来た」と感じるタイミングを逃してしまったのです。
結果として、
「ススキの開花が10月まで遅れた」
という現象が全国的に見られました。
■ ススキは“季節のリズム”を映す植物
ススキの開花には、次の二つの条件が重要だとされています。
- 日照時間の減少(短日反応)
― 昼が短くなると、花芽ができ始める。 - 気温の低下と昼夜の温度差
― 夜が涼しくなることで、花が咲く準備が整う。
つまり、今年のように残暑が長引き夜も暑い日が続くと、
ススキは「秋になった」と判断できず、花を咲かせる時期を逃してしまうのです。
■ 昨年と今年の違いを整理すると
年度 | 9月の気温傾向 | 10月の気温傾向 | ススキの開花時期 |
---|---|---|---|
2024年 | 一時的に涼しく秋を感じる | 記録的な高温(夏の戻り) | 9月中旬~下旬(お月見頃) |
2025年 | 猛暑続きで夜も暑い | ようやく平年並みに落ち着く | 10月上旬(やや遅れ) |
■ “季節の感覚”がずれていく中で
今年のススキの遅咲きは、単なる自然の気まぐれではなく、
気温の下がる「タイミングのずれ」によるものです。
人間も「秋らしくない」と感じていましたが、
ススキも同じように戸惑っていたのかもしれません。
それでも、ようやく秋風が夜を包み始めると、一斉に穂を伸ばし、
太陽の光を受けて銀色に輝き始めました。
植物は、私たち以上に気候の変化に敏感です。
季節のリズムが少しずつ変わり始めている今、
ススキの穂が教えてくれる“遅い秋”のサインに、
耳を傾けたいものです。
■ まとめ
🌾 昨年は「秋が早く来て夏が戻った」
🌾 今年は「夏が長く続き秋が遅れた」
同じ「暑い年」でも、気温が下がるタイミングの違いが、
自然界のリズムをこれほど左右するのです。
来年の秋、ススキはどんなタイミングで咲くだろうか。
季節の移ろいを確かめるように、またお月見のころ、
風に揺れる穂を見上げてみたいと思います。