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「正常性バイアスが支配する政治──トランプ現象を心理学で読み解く」

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2025.10.12

アメリカ政治を見ていると、まるで“心理実験”のような光景が広がっている。
トランプ大統領の発言は時に攻撃的で、時に支離滅裂。
同じ話を繰り返し、過去の人物や出来事を混同する姿には、「認知機能の低下ではないか」との指摘も出ている。

だが、心理学的に見ればトランプ氏の行動には、正常性バイアス確証バイアスという二つの典型的な思考の歪みが色濃く表れている。
これは個人の特性を超え、現代社会が抱える“集団的バイアス”を映し出しているとも言える。

1. 「同じ話を繰り返す」大統領

近年のトランプ氏は、同じ話を繰り返し語ることが多くなり、
オバマ氏とバイデン氏を混同したり、すでに亡くなった人物を「最近会った」と話したりするなど、
記憶の混乱を感じさせる発言が目立ちます。

アメリカ国内でも、「軽度認知障害(MCI)」や「前頭葉機能の低下」が疑われており、
政治家としての判断力を懸念する声が高まっています。

しかし、この現象を単に「老化」や「認知症」と片づけるのは早計かもしれません。
トランプ氏の行動には、心理学的な“バイアス”が強く作用していると考えられます。


2. 正常性バイアス:現実を“自分の都合で”解釈する

正常性バイアスとは、都合の悪い情報を「大したことない」と過小評価して、現実を歪めて認識してしまう心理現象です。

トランプ氏は、選挙での敗北を認めず、

「不正があった」「自分が本当の勝者だ」
と主張し続けました。

事実よりも「自分が信じたい世界」を優先してしまう。
これは、危険を過小評価して逃げ遅れる災害時の心理と同じ構造です。

つまり彼にとって「現実」は、
自分の正しさを裏付けるための舞台に過ぎないのです。


3. 確証バイアス:自分の信念を補強する情報しか見ない

確証バイアスは、人が自分の信じたい情報だけを集め、
反対の情報を無視する傾向のことです。

トランプ氏は、常に「自分に有利な報道」だけを引用し、
それに反する記事やデータを「フェイクニュース」として切り捨ててきました。

たとえば、

  • 自分を批判するメディアには「敵」というレッテルを貼る
  • 支持者がSNSで発する好意的なコメントを「真実」と受け取る

このように、世界を“自分中心の情報フィルター”で見ている状態が続いているわけです。


4. バイアス+記憶の混乱=“現実の再構築”

心理学的に見ると、バイアスと記憶の混乱は悪循環を生みます。

  1. 記憶が曖昧になる
  2. 自分に都合のよい記憶だけを残す(確証バイアス)
  3. その記憶を根拠に現実を判断する(正常性バイアス)
  4. 間違いを指摘されても「正しいのは自分」と信じる

このサイクルが続くと、現実とのギャップはどんどん拡大します。
それが、ガザやウクライナ、イランなどの国際問題に対して
「軽率なコメントを繰り返す」という形で現れているのです。


5. “バイアスの暴走”が世界を動かす

皮肉なことに、こうしたバイアスはトランプ氏のカリスマ性にもなっています。

  • 彼の「自信」は、確証バイアスの産物。
  • 彼の「強さ」は、正常性バイアスによる危機感の欠如。
  • 彼の「影響力」は、錯覚を確信に変える言語能力。

つまり、心理学的にはトランプ氏は「バイアスを政治力に変えた人物」とも言えます。
ただし、認知機能の低下が進行しているなら、それはもはや“戦略”ではなく“症状”に変わりつつあるとも考えられます。

観察される行動心理学的要因結果
同じ話を繰り返す記憶の混乱+正常性バイアス現実の矛盾を修正できない
敗北を認めない確証バイアス都合のよい情報だけ信じる
世界を単純化する認知的負荷の回避「善悪二元論」で説明
自己を誇示し続ける自己愛的傾向支持者にはカリスマ、他者には独善

トランプ氏は、単なる政治家ではなく、**「バイアスと記憶の揺らぎが生む現代の象徴」**です。
心理学を学ぶ者にとって、彼は反面教師であり、
「人間はどれほど自分の信念に支配されるか」を示す最良の実例といえます。

アメリカ国民、特にトランプ支持者も同様にバイアスにかかっています。バイアスに掛かっていることをその人たちは理解できていません。

多くの政治家はこのバイアスを使用します。そして、国民を煽り、騙すのです。

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