安全は、言葉で語るだけでは根づきません。
現場で働く一人ひとりが、自ら考え、正しい行動を取れる力を持つこと。
そのために、私は「教育」こそが安全の礎だと考えるようになりました。
🧰協力会社を巻き込み、“共に学ぶ現場”をつくる
安全担当となって最初に取り組んだのは、
協力会社を含めた全員教育の仕組みづくりでした。
多くの元請会社では、安全教育は形式的に行われ、
実際に手を動かす作業員までは届かないことが多い。
でも、本当に危険と向き合っているのは現場の作業員たちです。
「安全を高めるには、自社社員だけではなく、
協力会社の作業員を含めた全体のレベルアップが必要だ」
その信念から、私は特別教育を安全教育訓練に組み込む体制を整えました。
📜特別教育を内製化し、資格証を発行する仕組み
協力会社にとって、「教育を受けさせたい」と思える仕組みがなければ、
作業員を集めるのは容易ではありません。
だからこそ、教育を受けた証として資格証を発行できる制度を導入しました。
安全教育訓練を受ければ、そのまま資格が得られる――
この“明確な成果”が、参加の動機づけになりました。
実施した特別教育は次の通りです。
- 丸鋸作業従事者教育
- 振動工具作業従事者教育
- 自由研削砥石特別教育
- 低圧電気取扱特別教育
- 熱中症管理者教育
- フルハーネス特別教育
- 足場の組立て等作業従事者特別教育
これらの教育を毎月の安全訓練に組み込み、
可能な限り多くの作業員が資格を取得できる体制を築きました。
🏗️教育が「安全文化」を育てる
こうした仕組みを続ける中で、
現場の雰囲気が少しずつ変わっていきました。
作業員が自ら学び、仲間に教え、互いに確認し合う。
安全が“義務”ではなく、“文化”として根づき始めたのです。
協力会社も、「教育してもらう立場」から「一緒に育てる仲間」へと意識が変わりました。
現場の安全は、会社同士の壁を越えた“信頼”によって守られていく。
私はその瞬間に、「安全教育とは人を育てることだ」と確信しました。
🌾おわりに ― 教育は“未来への投資”
事故を防ぐための最も確かな道は、
一人でも多くの人が知識と判断力を身につけること。
教育は時間も手間もかかりますが、
それは“安全な未来への投資”にほかなりません。
私は今も、現場に立ち、伝え続けます。
「学ぶことで自分を守れる」
「知識が仲間を守る」
そのことを、身をもって知っているからです。
教えることは、信頼をつくること。
信頼があれば、安全は必ず育つ。