事故を経験してから5年後、私は東京工事グループ長として、
東日本エリアの工事統括を任されました。
現場を巡回し、安全パトロールを行いながら、
多くの作業員たちと向き合う日々が始まりました。
その後、大阪工事グループ長として再び西日本へ。
各地の工事を統括し、安全パトロールや協議会への参加を重ねる中で、
会社から「安全担当を任せたい」という要望を受けました。
これが、私の人生をさらに“安全一筋”へと導く転機となりました。
👷♂️安全は「現場の人」から生まれる
全現場の安全を統括する立場になると、
自然と“協力会社のあり方”について深く考えるようになりました。
どんなに自社の社員が安全意識を高めても、
実際に現場で手を動かすのは協力会社の作業員たち。
つまり、安全の質を高めるには、
協力会社を含めた「チーム全体のレベルアップ」こそが鍵なのです。
私は、「安全を下請けに任せるのではなく、
元請である自社が責任を持って指導すべきだ」と考え、
その想いを専務に直訴しました。
📚“教える資格”を片っ端から取った日々
専務の理解を得てからは、
安全教育のできる資格を次々と取得しました。
労働安全衛生法関連の講習、職長教育、高所作業、振動工具
アーク溶接、リスクアセスメント……。
学んだ知識を現場に持ち帰り、
毎月、安全教育訓練を実施しました。
ときには現場で汗を流しながら、
作業員と同じ目線で「なぜそれが危ないのか」を語り合いました。
それは、単なる“教育”ではなく、
一緒に考え、一緒に守るための時間でした。
🏗️自分を磨きながら、仲間と共に成長する
協力会社と共に安全のレベルを高める中で、
私自身もまた、学びを深めていきました。
日本橋梁建設業協会の安全部会や架設部会に参加し、
全国の安全担当者たちと意見を交わしながら、
「安全とは何か」をあらためて見つめ直す機会を得ました。
やがて、私は労働安全コンサルタント資格の取得を決意します。
現場の経験と知識を体系化し、
もっと多くの人に“安全の本質”を伝えるために。
🌾おわりに ― 「守る」から「伝える」へ
事故を経験した日から、
私はずっと“どうすれば事故を防げるのか”を問い続けてきました。
その答えは、一人の努力ではなく、
共に学び、共に高め合う現場づくりの中にありました。
「安全」は、決して与えられるものではなく、
人と人の信頼と学びによって育まれるもの。
そして、私は今日も言葉を紡ぎながら、
安全の心を次の世代へ織りつないでいきます。
守るために学び、学んだことを伝える。
それが、私の安全への“求道”です。