
― 写真から読み取れる「溶接部破断」の違和感 ―
青森地震(震度6)で、NTTの鉄塔が損壊したという報道がありました。
公開されている写真を見る限りですが、鉄塔の部材が溶接部で切断されたように見える箇所があります。
もしこれが事実で、
破断位置が本当に溶接部であるなら、極めて重大な問題です。
目次
溶接部は「弱点」ではない
一般の方には誤解されがちですが、
適切に施工された溶接部は、母材(普通部)より弱くなることはありません。
むしろ原則は、
- 溶接部 = 母材と同等、またはそれ以上の強度
- 設計上も「溶接部が先に壊れる」ことは想定しない
という考え方です。
分かりやすい例:骨折と同じ
これは人間の骨と同じです。
- 骨折した部分は、治癒後に骨が太く、強くなる
- 再骨折する場合、同じ場所ではなく別の場所が折れることが多い
構造物の溶接部も同様で、
正しく施工されていれば「先に壊れる場所」ではありません。
もし溶接部で破断しているなら
仮に、地震動によって
- 溶接部そのものが破断している
- ビード(溶接金属)や熱影響部で切れている
のであれば、考えられるのは次の点です。
① 施工不良の可能性
- 溶込み不足
- 欠陥(ブローホール、割れ)
- 不適切な溶接条件
② 材料・施工管理の問題
- 母材と溶接材料の不適合
- 熱管理不足
- 検査(非破壊検査)の不十分さ
③ 設計・想定を超えた応力集中
ただしこの場合でも、
通常は溶接部ではなく母材側が先に破断します。
そのため、
「溶接部が切れている」ように見える点に、技術者として強い違和感を覚えるのです。
写真だけでは断定できないが、軽視してはいけない
もちろん、現時点では
- 写真だけの判断
- 破断位置の誤認
- 溶接部に見える別部位の可能性
もあります。
しかし、
もし本当に溶接部が破断しているなら
それは地震のせいだけでは済まない
という点は、はっきり言えます。
インフラ構造物における重み
通信鉄塔は、
- 災害時のライフライン
- 公共性の極めて高い構造物
です。
だからこそ、
- 施工品質
- 検査体制
- 設計思想
のどれかに問題があった可能性は、
徹底的に検証されるべきです。
技術は「壊れ方」を見れば分かる
構造物は、
壊れ方に嘘をつきません。
- どこが先に壊れたのか
- なぜそこが壊れたのか
そこを読み取るのが、
土木・建築・安全に関わる人間の役割です。
今回の件は、
単なる地震被害として流してはいけない、
重要な示唆を含んでいる可能性があります。