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なぜ今、ユング心理学なのか

ブログ

2025.12.24

――安全行動を左右する「切り離す力」――

安全の分野では、システム1・システム2ヒューリスティックといった考え方がよく使われます。
「人は無意識に判断する」「考えずに動いてしまう」
これは、現場の安全を考えるうえで、とても重要な視点です。

しかし最近、私はあらためて カール・グスタフ・ユング の心理学に注目しています。
それは、人がなぜ同じ危険行動を繰り返してしまうのか、その“心の仕組み”を深いところから説明してくれるからです。


ユング心理学が教えてくれる「切り離す」という考え方

ユング心理学では、人の心を大きく

  • 意識
  • 無意識

に分けて考えます。

ここで重要なのが、
「都合の悪い体験や感情を、意識から切り離して無意識に送る」
という心の働きです。

これは決して特別なことではありません。
むしろ、人が日常的に行っている、ごく自然な心の防衛反応です。


停止線を無視する行為に潜む心理

具体例で考えてみましょう。

交差点で、

  • つい停止線を越えて進入してしまった
  • その瞬間、「やっちまった」と感じた

多くの人は、ここで一瞬ヒヤッとします。

しかし次の瞬間、

  • 事故は起きなかった
  • 叱られなかった
  • 特に問題は起きなかった

こうした結果になると、人の心はどう動くでしょうか。


「やっちまった」を切り離すと何が起きるか

本来であれば、

「危なかった。次は必ず止まろう」

意識に残し、行動を修正することが大切です。

ところが人は、
その不快な感情――
「怖かった」「危なかった」「失敗した」
を、無意識に切り離してしまうことがあります。

すると、

  • 「やっちまった」という感覚は薄れる
  • 意識には残らない
  • 学習につながらない

結果として、
次も同じ行動を繰り返すことになります。


繰り返しが「経験則」をつくる

この行動が何度も繰り返されると、心の中では次のような経験則ができあがります。

「停止線って、止まらなくても案外大丈夫」

これは、意識的にそう考えているわけではありません。
無意識の中で形成された“行動のクセ”です。

そしてこの無意識のクセこそが、
事故やヒヤリハットの温床になります。


なぜ今、ユング心理学なのか

システム1・システム2やヒューリスティックは、
「人はなぜ間違えるのか」を教えてくれます。

一方、ユング心理学は、
「なぜその間違いが修正されないのか」
「なぜ同じ行動が定着してしまうのか」
を教えてくれます。

そのカギが、
切り離し(無意識への押し込み)です。


安全のために必要なのは「切り離さない力」

安全行動を定着させるために大切なのは、

  • ヒヤッとした感覚
  • 「やっちまった」という気づき

これを
切り離さず、意識にとどめることです。

そして、

「なぜそうなったのか」
「次はどう行動するのか」

を、言葉にして振り返ること。

この小さな積み重ねが、
無意識のクセを書き換え、
本当の意味での安全行動につながっていきます。

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