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〜下請会社が知っておくべきポイントをやさしく解説〜
2026年1月から、労務費(人件費)の上昇を価格に反映しやすくするための法律改正が始まります。これに合わせて、公正取引委員会が出している「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(ガイドライン)」が改正されました。
この改正の一番大きなポイントは、「下請会社が価格改定を求めたのに、元請が協議に応じない」ということが、法律違反になる可能性がはっきり示されたという点です。
そもそも「価格転嫁」とは?
材料費だけでなく、
✔ 職人さんの賃金
✔ 社会保険料
✔ 安全教育の費用
など、人件費が上がった分を価格に反映させることを言います。
いま政府は、賃上げを定着させることを強く進めています。
しかし、価格が据え置きのままでは、賃上げしたくても原資が足りません。
そのため、
「労務費が上がったら、元請も含めて価格を見直す文化を作ろう」
という流れになっているのです。
今回の改正で何が変わったのか?
🔹 協議を断るのはNGに近い
下請会社が、
「労務費が上がったので、価格改定の相談をしたい」
と申し入れたのに、
「忙しいからまた今度」
「うちは値上げはやらない方針」
などとして話し合いにすら応じないことは、
法律違反になる可能性があると明記されました。
これは下請会社にとって、とても大きな前進です。
🔹 定期的に「価格の話し合い」をすることが推奨に
元請は、
✔ 年1回
✔ 半年に1回
など、定期的に協議の場を設けることが求められます。
特に、
⚠ 長年同じ単価のまま
⚠ 実質的に継続している「スポット契約」
こういった取引は、真っ先に協議すべき対象です
🔹 書面やメールで「記録を残す」ことが重要に
発注側・受注側の両方に、
📌 交渉内容をきちんと記録し、双方が保存すること
が求められます。
口頭だけのやり取りは、もう時代遅れです。
メール・議事録・覚書など、形に残すことが大切になります。
受注側(下請会社)はどう動けばいいの?
ガイドラインでは、下請側にも次のような行動をすすめています。
✔ 公的データを根拠として使う
例えば
・最低賃金アップ
・春闘の賃上げ
・国の労務単価
などです。
「うちも人件費が上がりました!」だけでなく、
「最低賃金が○%上がり、職人単価は○円上昇しました」
と、数字で示すことが大切です。
✔ 自分から希望単価を提示する
元請の提示を待つのではなく、
「当社としては、○○円を希望します」
と、堂々と伝えて良いのです。
✔ 相談窓口も活用してOK
商工会議所なども相談に乗ってくれます。
「言いづらい…」
「どう説明したらいいかわからない…」
そんな時は、一人で抱え込まなくて大丈夫です。
元請に求められる姿勢も明確に
発注者には、
✔ トップが賃上げ方針を示す
✔ 定期的に協議をする
✔ 労務費転嫁を理由に不利益扱いをしない
✔ サプライチェーン全体で価格を見直す
といった責任が求められます。
「労務費はそっちで吸収して」
という姿勢は、もう通用しない時代です。
これからの建設業に大切なこと
今回の改正は、
「安い単価で抱え込み続ける文化をやめよう」
という強いメッセージでもあります。
労務費を正しく価格に反映することは、
✨ 職人の確保
✨ 安全教育の充実
✨ 品質の維持
✨ 働く人の生活を守ること
すべてにつながります。
最後に
下請会社の皆さんへお伝えしたいのは、
「価格交渉はわがままではありません」
ということです。
むしろ、企業として当然の責任ある行動なのです。
これからは
✔ 根拠を準備し
✔ 記録を残し
✔ 定期的に話し合う
そんな透明で健全な取引が、ますます求められていきます。
もし、現場での交渉文書や資料づくりが必要であれば、そのお手伝いもできます。
一緒に、無理のない健全な安全管理・賃金環境を整えていきましょう。