CONTENTS コンテンツ

【安全と心理】昭和の「職長像」を令和の現場にそのまま当てはめていませんか

ブログ

2026.01.05

〜ユング心理学の“元型”から考える職長の役割〜

現場で働く人たちの価値観は、時代とともに大きく変わってきました。
にもかかわらず、「職長とはこうあるべきだ」という像だけが、昭和のまま残ってしまっている――。
私は、ここに今の現場が抱える課題の一つがあると感じています。

この問題を、ユング心理学の「元型(アーキタイプ)」という考え方から整理してみます。


■ 元型って何だろう?

ユングは、人間の心の奥底には共通した“型”のようなものが存在すると考えました。
それを「元型」と呼びます。

代表的なものには、

  • 父親の元型(権威・規律・方向づけ)
  • 母親の元型(保護・受容)
  • 英雄の元型(困難に挑む)
  • 神の元型(絶対的存在)

などがあります。

元型は「心の設計図」のようなもので、基本の形は変わりません。


■ けれど、“表れ方”は時代で変わる

ここが重要なポイントです。

元型そのものは同じでも、
社会や文化が元型をどう解釈するかは、時代で大きく変わるのです。

例えば「父性の元型」。

● 昭和の父性のイメージ

  • 強くあれ
  • 我慢せよ
  • 口答えするな
  • 叱って育てる

いわば「厳格な父」。


● 平成・令和の父性のイメージ

  • 話を聞く
  • 相談に乗る
  • 心理的安全性をつくる
  • 共に考える

こちらは「伴走する父」。

同じ元型でも、時代によって象徴する姿が違うわけです。


■ 昭和の「職長像」も、実は元型だった

昭和の現場で求められていた職長像は、

  • 厳しい
  • 絶対的リーダー
  • 背中で語る
  • 叱って鍛える
  • 無理も受け入れて前へ進む

これは、
「父性の元型」+「英雄の元型」が強く表れていた姿だと言えます。

そして多くの昭和世代は、
この“型”に合わせて育ってきました。


■ しかし、平成・令和の若者は違う型で育った

今の若者は、

  • 対話を重視する教育
  • 心理的安全性
  • 自己肯定感
  • 個性尊重
  • 感情の健全な扱い

こうした価値観の中で育っています。

彼らが心の奥に持つ「理想のリーダー像」は、

叱り飛ばす父親
ではなく
話を聞いてくれる伴走者

に近いのです。


■ 問題はここからです

昭和の“職長の元型”が、内容を調整されないまま、今も現場で使われている。

つまり、

時代が変わったのに
リーダー像だけが昭和のテンプレートのまま残っている

これが、
ベテラン職長と若手作業員の間に生じる「心のズレ」の正体だと思います。


■ このズレが現場に何をもたらすか

● 若手の側

  • 怒鳴られると萎縮する
  • 理不尽と感じる
  • 心を閉ざす
  • 危険を報告しなくなる
  • 退職を考える

● 職長の側

  • 「最近の若い奴は弱い」と感じる
  • 昭和のやり方が通じない
  • 自分の価値観が揺らぐ
  • ストレスが増える

● 結果

  • 会話が減る
  • ヒヤリの共有が止まる
  • 指示の意図が伝わらない
  • 安全が危うくなる

これは単なる世代ギャップではありません。
安全問題そのものです。


■ 元型は変えられない。けれど“解釈”は変えられる

ユング心理学のポイントはここです。

元型の核はそのままでいい
ただし、現代版に翻訳して職長教育に取り入れる必要がある

ということ。

たとえば、

昭和型現代型
命令で動かす対話で納得させる
叱って伸ばす承認+改善提案で伸ばす
我慢=美徳無理しない=安全
英雄であれメンターであれ
背中で見せる言葉でも伝える

このような元型の“使い方のアップデート”が求められています。


■ まとめ

  • 元型は生まれつきの心の型
  • しかし、表れ方は時代で変わる
  • 昭和の「職長像」は、昭和社会に合った元型解釈
  • 今の若者は、別のリーダー像を内面化している
  • 昭和の元型をそのまま使うと、ズレが生じる
  • そしてそれは、安全リスクにもつながる

■ 最後に

私は、
昭和の職長さんたちが築いてきた「現場を守る気持ち」自体は、今も全く変わらず大切だと思っています。

ただ、その伝え方や人の動かし方だけは、
時代に合わせて少し柔らかく整えていく必要がある。

ユング心理学は、その調整を考えるヒントになります。

この記事をシェアする