CONTENTS コンテンツ

アナログを知る世代だからこそ、デジタルを活かせる

ブログ

2026.03.02

最近、建設業界では「技術力の低下」がよく話題になります。
若手はデジタルに強い。しかし、基礎が弱い――そんな声を耳にすることも少なくありません。

私は、アナログの現場を経験し、その後デジタルへと進んだ世代です。
だからこそ感じることがあります。

アナログを知らないままのデジタルは、土台のない建物と同じだということです。


図面は読める。でも「現場」が読めない

例えば、図面の扱いです。

今はタブレットで図面を拡大し、寸法も瞬時に確認できます。
3Dモデルで施工手順も可視化できます。

しかし、こんな場面がありました。

若手社員が、タブレットの図面通りに墨出しを行いました。
数値は正しい。データも間違っていない。

ところが、現場を見ると――
隣接する既設構造物との取り合いが考慮されていませんでした。

なぜか。

デジタル図面は「正確」ですが、
現場の歪み・誤差・経年変化までは映し出さないからです。

アナログ世代は、まず現場を歩き、
「目で見る」「手で触る」「匂いを感じる」
そうやって状況を把握してから図面を見ました。

データの前に、現実を見る。
これが基礎です。


測量機は使える。でも原理を知らない

レーザーレベルやトータルステーションは非常に便利です。
しかし、機械の数値をそのまま信じてしまう人もいます。

以前、機器の初期設定がずれていたことがありました。
表示される数値は正常。しかし実際は誤差が出ていた。

そこで差が出ました。

原理を理解している人は、
「おかしい」と気づきます。

・水準の取り方
・基準点の重要性
・誤差の出方

これを体で覚えているからです。

アナログ時代は、水糸を張り、下げ振りを使い、
自分の感覚と照らし合わせながら確認していました。

デジタルは便利です。
しかし、原理を知らなければ異常に気づけないのです。


技術力低下の本当の原因

技術力低下と言われる原因は、
能力が低いからではありません。

基礎を飛ばしていることが問題なのです。

・なぜこの手順なのか
・なぜこの安全措置が必要なのか
・なぜこの寸法なのか

「なぜ」を教えず、「操作方法」だけを教える。

これでは応用力が育ちません。


Safety-IIの視点から見る基礎の重要性

安全の世界で言えば、これはSafety-IIの考え方にも通じます。

うまくいく理由を理解するには、
普段の“当たり前”を理解していなければなりません。

基礎がある人は、状況が変わっても対応できます。
基礎がない人は、マニュアル外になると止まってしまう。

レジリエンス(しなやかな対応力)は、
基礎の上にしか育ちません。


アナログとデジタルは対立しない

私はデジタルを否定しません。
むしろ積極的に活用すべきだと思っています。

しかし順番が大切です。

  1. まず原理を学ぶ
  2. 手作業で体験する
  3. その上でデジタルを使う

この順序が逆になると、技術は薄くなります。

アナログを知る世代の役割は、
「昔はこうだった」と語ることではありません。

なぜそれをしていたのかを伝えることです。


次世代へ残すもの

建設業は経験産業です。
体で覚えた知識は、簡単には消えません。

私たちの世代ができることは、

・若手に現場を歩かせる
・手作業を一度は体験させる
・失敗を共有する
・原理を説明する

その上で、
デジタルを使いこなす力を育てることです。

アナログの基礎 × デジタルの効率

これが、本当の技術力向上です。


技術とは、便利さではありません。
「なぜ分かるのか」を説明できる力です。

基礎を持つ人間こそ、
デジタルを武器にできます。

それが、アナログを経験した私たち世代の強みだと、
私は信じています。

この記事をシェアする