
目次
1) 事故が起きると、人はSafety-Iに戻る
事故・トラブルが起きた瞬間、組織はこうなります。
- 原因は何だ
- 誰が悪い
- ルールを増やせ
- 再発防止を出せ
これは悪いことではなく、「危険に対する自然な反応」です。
でもこの反応が強いほど、Safety-IIの視点(成功の仕組みを増やす)が後回しになります。
2) 「うまくいっている」は当たり前すぎて、記録されない
現場の日常は、実は「調整の連続」です。
- 段取りを変える
- 人員の薄さを工夫で補う
- 天候や材料のバラつきに合わせる
- ちょっとした違和感で手を止める
こういう“成功の工夫”は、起きてもニュースになりません。
だから、組織にデータが溜まりにくい。
結果として、学びの材料が不足しがちです。
3) 成功の理由は「見えにくい」
事故は「何が起きたか」が比較的はっきりします。
一方で成功は、
- いろいろな人が
- 小さな調整を積み重ね
- たまたまではなく、うまく収束させた
という形なので、原因が一本線になりません。
つまりSafety-IIは、説明が難しい。
だから報告書・会議・教育で使いにくくなります。
4) 管理側が求めるのは「証拠」だが、Safety-IIは数字にしにくい
経営や発注者は、どうしても
- 何件減ったか
- 何%改善したか
- ルールは増えたか
- 監査で説明できるか
を求めます。
Safety-IIの「余裕」「調整力」「気づき」「相談しやすさ」は、成果が出るまで時間がかかるし、数値化しにくい。
結果として、評価されにくい=投資されにくいになります。
5) Safety-IIが「ゆるい安全」に誤解される
現場では時々こう受け取られます。
- 「現場の裁量を尊重」=好きにやっていい
- 「うまくやってる理由を見る」=注意しなくていい
- 「失敗より成功」=事故の追及をしない
本当は違います。
Safety-IIは「ルールを捨てる」ではなく、現実の変動に耐える安全の作り方です。
でも説明が難しいため、誤解が広がりやすい。
6) 現場が忙しく、振り返りの時間が取れない
Safety-IIは「観察→対話→学習→仕組み化」が要ります。
でも現場は、
- 工期
- 人手不足
- 書類
- 立会い
- 追加変更
でパンパン。
結局、短時間でできるSafety-I(ルール・注意喚起・KY強化)に寄りやすい。
7) 「心理的安全性」が不足していると、成功の工夫が出てこない
Safety-IIの材料は、現場の本音です。
- ここは危ないから、こう工夫した
- ここは無理が出るから、こう調整した
- 実はこの手順は現実に合っていない
でも、言うと「手順違反」扱いされる組織では黙ります。
すると成功の知恵が上がらない。
Safety-IIが育たない。
広げるための「現場向けのコツ」3つ
最後に、実務で効く形に落とすとこうです。
① 「成功事例」を“短く”集める
ヒヤリハットの逆版で、1分で書ける形。
- 今日うまくいった工夫は?
- 今日の危険を避けた一手は?
- いつもと違った点と、合わせた点は?
② 「違反探し」にしない運用ルールを先に決める
出てきた工夫を、個人攻撃に使わない。
まずは仕組み化の材料として扱う。
③ 「変動が大きい作業」から始める
全部をSafety-IIにする必要はありません。
天候・段取り替え・狭所・混在作業など、変動の大きいところから始めると効果が見えやすいです。