―― レジリエンスを育てる現場の力 ――
Safety-IIという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
従来の安全活動は、
「事故を減らす」
「原因をなくす」
という発想が中心でした。これをSafety-Iと呼びます。
一方でSafety-IIは、
「なぜ日常がうまくいっているのか」に目を向ける考え方
です。
実は、私たちの現場は毎日うまくいっています。
事故が起きない日のほうが圧倒的に多いのです。
では、なぜうまくいっているのか。
その鍵が「レジリエンス」です。
目次
レジリエンスとは何か
レジリエンスとは、
変化や想定外に対して、しなやかに適応する力
です。
事故が起きた後に立ち直る力ではありません。
事故が起きる前から働いている「日常の調整力」です。
例えば現場では、
・天候の変化
・人員の不足
・工程の遅れ
・材料のばらつき
こうした“変動”が常に起きています。
それでも事故が起きないのは、
誰かがどこかで調整しているからです。
これがレジリエンスです。
レジリエンスの4つの力
レジリエンスには4つの力があります。
① 予見する力
② 監視する力
③ 対応する力
④ 学習する力
この4つが機能しているとき、安全は安定します。
では、この力をどうやって育てるのか。
ここで登場するのが「5S」です。
5Sはレジリエンス訓練である
多くの現場で5Sは「整理整頓活動」として扱われています。
しかし本質はそこではありません。
5Sは、レジリエンスを鍛える日常訓練です。
整理 = 予見する力
不要なものを排除することは、
「将来の事故の芽を摘む」ことです。
整理とは、未来を見る行為です。
整頓 = 監視する力
物の位置が決まっていると、
「いつもと違う」がすぐ分かります。
整頓とは、異常に気づく仕組みづくりです。
清掃 = 変化に触れる力
掃除は単なる美化活動ではありません。
床の油、ボルトの緩み、段差の発生。
清掃は“触れて異常を感じる”行為です。
清潔 = 対応の安定化
良い状態を維持する標準化。
これは、対応力を属人化させないための基盤です。
しつけ = 学習する力
ヒヤリハットを共有する。
成功事例を言葉にする。
これが文化として根づいたとき、
レジリエンスは強化されます。
なぜSafety-IIが広がらないのか
Safety-IIが浸透しない理由の一つは、
「概念が抽象的だから」です。
レジリエンスという言葉も、
“なんとなく強い”というイメージで止まりがちです。
しかし、5Sという日常活動と結びつければ、
レジリエンスは具体化します。
段差のヒヤリハットから考える
例えば、床にできたわずかな段差で躓いた事例。
これは、
・整理が不十分だったのか
・整頓で見える化できなかったのか
・清掃で気づけなかったのか
というレジリエンスの視点で読み解けます。
ヒヤリハットは、
レジリエンス能力の“弱点発見装置”なのです。
5Sの再定義
5Sは掃除ではありません。
5Sは、
「レジリエンス4能力を鍛える基礎トレーニング」
です。
きれいな現場は安全な現場、ではなく、
変化に強い現場が安全な現場なのです。
最後に
Safety-IIは、
ルールを減らす考え方ではありません。
現場の“現実”に目を向け、
日常の成功を強化する考え方です。
そしてその出発点は、
特別な理論ではなく、
毎日の5S活動にあります。
5Sを「やらされる活動」にするのか、
「レジリエンスを育てる活動」にするのか。
その違いが、
これからの安全文化を左右します。