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ユング心理学(4)

ブログ

2026.03.28

集合的無意識と職場の空気

〜なぜ現場には「言える現場」と「言えない現場」があるのか〜

皆さん、こんにちは。

ここまでの連載では、

・人は見たくない感情を「切り離す」ことがある
・その感情は無意識に入り、行動に影響する
・その結果、「まあ大丈夫だろう」という正常性バイアスが生まれる

という心理の流れを見てきました。

今回は、もう一歩視点を広げて、
「個人の心」から「集団の心」へと話を進めたいと思います。

現場でよく聞く言葉があります。

「この現場は言いやすい」
「ここはちょっと言いにくい」

実はこの違いには、心理学的な背景があります。

その鍵になるのが、ユング心理学の概念
「集合的無意識」です。


集合的無意識とは何か

ユングは、人間の心の深い部分には、
個人を超えて共有される心の領域があると考えました。

これを
集合的無意識
と呼びました。

少し難しい言葉ですが、
もっと簡単に言うと

人が集まることで生まれる「見えない空気」

のようなものです。

例えば、同じ会社でも現場によって

・意見が出やすい現場
・ミスを言いにくい現場
・冗談が言える現場
・ピリピリした現場

など雰囲気が違います。

この雰囲気は、誰か一人が作っているわけではありません。

長い時間をかけて、
その集団の中で共有されてきた

無意識のルール

が作り出しています。

これが、職場の「空気」です。


職場の空気はこうして作られる

例えば、ある現場で新人がこう言ったとします。

「すみません、この作業ちょっと不安です」

そのとき職長が

「そんなことも分からんのか」

と叱ったとします。

すると周りの人はどう感じるでしょうか。

「余計なことは言わない方がいい」

こうして現場には、
次のような空気が生まれます。

・質問しない方がいい
・ミスは隠した方がいい
・指摘すると面倒になる

これが繰り返されると、

誰も何も言わない現場になります。

つまり、

個人の沈黙が積み重なり、
集団の空気になる

のです。


空気は無意識で広がる

面白いことに、この空気は

言葉で説明されなくても伝わります。

新人が現場に入ると、
誰も説明していないのに

「ここでは言いにくいな」

と感じることがあります。

これは、

・表情
・声のトーン
・会話の雰囲気

などを無意識に読み取っているからです。

つまり、

集合的無意識は、
人から人へと自然に伝わる

のです。


空気が事故を作ることがある

ここが安全の世界でとても重要な点です。

事故の原因は、

個人のミスだけではありません。

その背景には、

職場の空気

が存在することがあります。

例えば、

本当は危険だと感じているのに

「言うと怒られる」

と思って黙る。

その結果、

危険が見過ごされます。

事故の調査をすると、

よく次の言葉が出てきます。

「本当はおかしいと思っていた」

しかし、

言えなかった。

これは個人の問題ではなく、

職場の空気の問題

なのです。


空気を変える人

では、この空気は変えられないのでしょうか。

実は、変えることができます。

その鍵を握るのが
リーダーの態度です。

職長が例えばこう言ったとします。

「それ、いい指摘やな」

「気づいてくれてありがとう」

「確認するのは大事なことや」

こうした言葉が増えると、

現場の空気は少しずつ変わっていきます。

すると、

・違和感を言える
・ミスを共有できる
・相談しやすい

という雰囲気が生まれます。

つまり、

一人の態度が
集団の無意識を変えていく

のです。


次回予告

ここまで、

・切り離し
・システム1
・正常性バイアス
・集合的無意識

という流れで、人の心理を見てきました。

最終回となる次回は、

心理的安全性

というテーマで、

安全な職場を作るための
具体的なヒントをお話しします。

「安心して意見が言える職場」は、
なぜ事故が少ないのか。

心理学の視点から整理していきます。

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