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ユング心理学(5)

ブログ

2026.03.29

心理的安全性と安全文化

〜安心して「気づき」を言える職場をつくる〜

皆さん、こんにちは。

これまでの連載では、人間の心の働きを次のような流れで見てきました。

・人は見たくない感情を「切り離す」ことがある
・その感情は無意識に入り、行動に影響する
・その結果、「まあ大丈夫だろう」という正常性バイアスが生まれる
・そしてその心理は、職場の「空気」として広がる

つまり事故の背景には、単なる個人のミスではなく、

人の心と、職場の空気

が関係しているということです。

では、安全で働きやすい職場を作るためには、どのような環境が必要なのでしょうか。

その鍵となる概念が、
心理的安全性です。


心理的安全性とは何か

心理的安全性という言葉は、アメリカの組織心理学者
エイミー・エドモンドソン教授(ハーバード大学)
の研究から広まりました。

心理的安全性とは、

このチームでは、自分の意見や疑問、ミスを安心して言える

という確信のことです。

ポイントは、

「優しい職場」や
「仲が良い職場」

という意味ではないということです。

心理的安全性とは、

間違いや疑問を言っても、人格を否定されない

という安心感です。

例えば、

・「それ危なくないですか?」
・「ちょっと分からないので教えてください」
・「ここ間違えてしまいました」

こうした言葉が自然に出る職場は、心理的安全性が高いと言えます。


医療チームの研究

エドモンドソン教授は、病院の医療チームを研究したとき、興味深い結果を発見しました。

一見すると、ミスの報告が多いチームほど優秀だったのです。

普通はこう思います。

「ミスが多いチームは危険ではないか」

しかし実際には逆でした。

優秀なチームでは、

・小さなミス
・ヒヤリとした出来事
・違和感

が、積極的に報告されていました。

つまり、

ミスが多いのではなく、
ミスが見えるチーム

だったのです。

逆に心理的安全性が低いチームでは、

ミスは起きていても
報告されない

という問題がありました。


Googleの研究「Project Aristotle」

心理的安全性の重要性を世界に広めたもう一つの研究があります。

それが、Googleが行った

Project Aristotle(プロジェクト・アリストテレス)

です。

Googleは、数百のチームを分析し、

「成果を上げるチームの共通点」

を調べました。

その結果、最も重要だった要素は

心理的安全性

でした。

チームの成功を決めるのは、

・個人の能力
・学歴
・経験

ではなく、

メンバーが安心して意見を言える環境

だったのです。

心理的安全性が高いチームでは、

・質問が増える
・意見が出る
・ミスが共有される
・学習が進む

こうして、チーム全体の能力が高まっていきます。


安全の現場でも同じことが起きる

これは建設や製造の現場でも、まったく同じです。

事故の直前には、

必ずと言っていいほど

小さな違和感

があります。

例えば、

・「この足場、少し揺れるな」
・「この手順で大丈夫かな」
・「今日は体の動きが少し悪い」

しかし、心理的安全性が低い職場では、

こうした声は出ません。

「余計なことを言うな」

「仕事が遅れる」

「怒られる」

そう思うからです。

その結果、

危険は共有されず、
事故に近づいてしまいます。


心理的安全性は職長から始まる

では、心理的安全性はどうすれば生まれるのでしょうか。

実は、とてもシンプルです。

鍵になるのは、

リーダーの態度

です。

例えば、部下がこう言ったとします。

「この作業、少し不安です」

そのとき、

「そんなことも分からんのか」

と言えば、その瞬間に心理的安全性は消えます。

しかし、

「いい質問だね」
「どこが気になる?」

と返せば、

現場の空気は変わります。

すると、

・違和感を言える
・ミスを隠さない
・危険を共有できる

という文化が生まれます。


安全文化は「言える空気」から生まれる

ここまでの連載で見てきたように、

・切り離し
・無意識
・バイアス
・集合的無意識

これらはすべて、

職場の空気

と関係しています。

そして、その空気を変える力が

心理的安全性

なのです。

安全文化とは、

立派なスローガンやポスターではありません。

それは、

「ちょっと待ってください」

と誰もが言える空気です。

この一言が言える現場では、

事故は確実に減ります。


おわりに

人は誰でも、

不安を感じ、迷い、間違えます。

それは弱さではなく、
人間である証拠です。

大切なのは、

その気づきを

安心して共有できる職場

を作ることです。

心理的安全性は、
特別な制度ではありません。

それは、

「その一言、ありがとう」

という、
日常の小さな言葉から生まれます。

現場の安全は、
この言葉から始まるのかもしれません。

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