

確証バイアスにかかった私―流通センター工事現場の安全管理を考える
家からほど近い流通センターの工事現場。入口は一か所しかなく、伸縮ゲートが取り付けられているものの、時間外でも開いたままになっています。以前も指摘しましたが、改善される様子はなく、夕方以降だけでなく朝も開いたままで、誰も立っていません。
そこへ、鉄骨を積んだフルトレーラーが続々と入ってくる。 それも7時近くになってもまだ運搬が続いている。時間制限は掛かっていないのか?
橋梁工事を市街地で行う場合、私が知る限り、6時前には現場内にトレーラーを自分たちで誘導し、ゲートを閉じて安全管理を徹底していた。それに比べてこの現場では、ゲートには誰もいない、トレーラーは誘導もなしに入ってくる。先導車もいない状態で。
「これは危ないのではないか?」
そう思う私は、もしかしたら確証バイアスにかかっているのかもしれません。
確証バイアスとは?
確証バイアス(Confirmation Bias)とは、自分がすでに信じていることに合致する情報ばかりを集め、反対の情報を無意識に無視してしまう心理的傾向のことを指します。つまり、「この現場は安全管理ができていない」という先入観を持ってしまうと、悪い面ばかりが目に入り、良い面には気づかないということが起こります。
例えば、
- 「ゲートが開いている → 誰でも入れる → 危険だ」
- 「トレーラーが誘導なしで入ってくる → 危険だ」
- 「時間制限がないのでは? → 管理がずさんなのでは?」
というように、すでに悪い部分に焦点を当ててしまい、それが強化されていくのです。
本当に危険なのか? 事実を整理する
確証バイアスにかからず、公正な視点で考えるために、まずは事実と推測を分けて整理してみます。
事実として確認できること
✅ ゲートは開いたままになっている
✅ 入口には警備員がいない
✅ フルトレーラーが次々と入ってくる
✅ 7時近くになっても搬入が続いている
✅ 先導車がいない
現時点でわからないこと(推測が入る部分)
❓ 時間外に開いている理由(単なる管理不足なのか、別のルールがあるのか)
❓ トレーラーが誘導なしで入る理由(本当に必要ないのか、それともたまたま見たときにいなかったのか)
❓ 交通整理や安全対策は他の方法で取られているのか
❓ 時間制限がないのか、それとも許可を得た上で搬入しているのか
こうしてみると、事実だけを見た場合でも問題点は多いですが、まだ情報が不足していることもわかります。
安全管理の視点で見ると?
確証バイアスを排除しながらも、安全の観点から見れば、やはりこの状況にはいくつかの問題点があると考えられます。
1. ゲート管理の不備
通常、大型車両の出入りがある工事現場では、入口の管理が徹底されるべきです。無人のゲートが開いたままであれば、
- 不審者や無関係の人が立ち入るリスク
- 歩行者や一般車両との接触事故のリスク
が発生する可能性があります。
→ 対策案
- 警備員を配置する
- 時間外は施錠する、または監視カメラを設置して管理する
2. フルトレーラーの誘導なし
フルトレーラーは大型で、旋回半径が大きく、視界の死角も多いため、誘導員なしでは危険が伴います。特に市街地では、歩行者や他の車両との接触リスクが増します。
→ 対策案
- 誘導員を配置し、安全に進入させる
- 先導車を活用する(特に狭い道路では必須)
- 運転手と無線で連絡を取り、進入タイミングを調整する
3. 時間制限の有無
一般的に、大型車両の搬入は交通量の少ない時間帯に行われることが推奨されます。しかし、この現場では7時近くになっても搬入が続いているため、
- 通勤時間帯に影響を与える可能性
- 渋滞や事故のリスク増加
が考えられます。
→ 対策案
- 道路管理者と協議し、搬入時間を調整する
- 通勤ラッシュ時を避けるスケジュール管理を実施する
確証バイアスを乗り越え、適切な安全対策を
私たちが安全を考えるとき、「問題がある」と決めつけるのではなく、何が事実なのかを整理し、合理的な対策を講じることが重要です。
私がこの工事現場を見たとき、確証バイアスの影響で「悪い部分」ばかりに目がいってしまいました。しかし、改めて整理すると、実際に改善が必要な点が多いことも事実です。
大切なのは、
✅ 先入観にとらわれず、客観的に事実を整理する
✅ 危険を過小評価せず、具体的な対策を考える
✅ 必要な場合は適切な機関(施工管理者や道路管理者)へ報告・協議する
これらの視点を持つことで、安全意識の高い現場づくりが可能になります。
「確証バイアスにかかっているかもしれない」と自覚することこそ、より良い安全管理の第一歩なのかもしれません。
みなさんも、自分の見ている「事実」が確証バイアスによるものではないか、一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか?