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「良い現場所長は、何を見て、何を考えているのか」― 現場経験から考えるSafety-IIとレジリエンス ―

ブログ

2026.09.12

第3回 元請の仕事は「仕事をしやすい環境」をつくること

― 「仕事をさせる」から「仕事をしていただく」へ ―

前回、現場所長には「次を見る力」が必要だという話をしました。

今日の作業だけを見るのではなく、その次を考える。

工程が変わったらどうなるのか。

何が必要になるのか。

どんな問題が起こる可能性があるのか。

そして、先を読んだら次にすることがあります。

人が仕事をしやすい環境を整えることです。

私は現役時代から、これが元請会社の大切な仕事だと考えていました。

元請だけでは現場はつくれない

建設現場では、さまざまな専門工事会社が仕事をしています。

鳶、鉄筋、型枠、土工、設備、電気、重機など、それぞれの専門家が自分たちの技術を使って仕事をしています。

当然ですが、元請会社だけでは構造物をつくることはできません。

実際に現場でものをつくっているのは、多くの協力会社の人たちです。

ところが、「元請」「下請」という言葉があるためでしょうか。

いつの間にか、

「元請が仕事を与えている」

「下請に仕事をさせている」

という感覚を持ってしまうことがあります。

私は、この考え方には以前から違和感がありました。

私の感覚は反対です。

協力会社の皆さんに、自分が出来ない仕事をしていただいている。

この考え方が基本でした。

「仕事をしていただく」と考えれば役割が変わる

「仕事をさせている」と考えれば、

「こちらの指示通りにやってくれ」

という発想になりやすくなります。

しかし、

「専門家に仕事をしていただいている」

と考えれば、元請側がするべきことが見えてきます。

作業場所は確保されているか。

必要な資材は準備されているか。

重機は使える状態になっているか。

他の作業と干渉しないか。

安全設備は整っているか。

作業員が無理なく仕事のできる工程になっているか。

つまり、

「どうやって働かせるか」ではなく、「どうすれば働きやすくなるか」

を考えるようになります。

この違いは、現場づくりに大きく影響すると思います。

人だけを見ても安全にはならない

安全管理では、どうしても作業員の行動に目が向きます。

「危険なことをするな」

「ルールを守れ」

「もっと注意しろ」

もちろん、危険な行動は注意しなければなりません。

しかし、そこで一度考えてほしいのです。

その人は、なぜその行動をしたのでしょうか。

作業場所が狭かったのではないか。

必要な道具が近くになかったのではないか。

工程に余裕がなかったのではないか。

他の作業との取り合いがあったのではないか。

指示が分かりにくかったのではないか。

人の行動だけを見て、

「本人の注意が足りなかった」

で終わらせてしまえば、環境に存在する問題を見落としてしまいます。

行動は「人」と「環境」から生まれる

心理学者クルト・レヴィンは、人の行動について、

B = f(P, E)

という考え方を示しました。

Bは行動、Pは人、Eは環境です。

つまり、人の行動は、その人自身だけではなく、その人を取り巻く環境との関係によって生まれるという考え方です。

これは建設現場にも非常によく当てはまります。

安全に仕事をしてほしいのであれば、作業員に「安全にやれ」と言うだけでは足りません。

安全に仕事ができる環境をつくる。

作業員に効率よく仕事をしてほしいのであれば、

効率よく仕事のできる環境を整える。

私は、そこに元請会社の大きな役割があると思っています。

良い環境は、良い仕事につながる

作業する場所が整理されている。

必要な資材が予定通り届いている。

重機を安全に使える。

他職種との調整ができている。

次に何をするのか職長が理解している。

こうした環境が整っていれば、協力会社の人たちは自分たちの専門能力を発揮できます。

反対に、段取りが悪く、資材も来ない、作業場所も空いていない、他業者との調整もできていない。

そんな環境で、

「もっと効率よく仕事をしろ」

「安全に作業しろ」

と言われても難しいでしょう。

所長の力量は、問題が起きた時だけに現れるのではありません。

何も問題が起きていないように見える現場の裏側で、どれだけ環境を整えているか。

そこにも表れるものだと思います。

「管理する」から「力を発揮してもらう」へ

私は、所長が現場のすべてを自分で動かしているとは考えていませんでした。

実際に現場を動かしているのは、そこで働いている一人ひとりです。

所長が鉄筋を組むわけではありません。

型枠を組み立てるわけでもありません。

重機を操作するわけでもありません。

それぞれの専門家が仕事をして、現場が出来上がっていきます。

だから所長の仕事は、

人を動かすことではなく、人が力を発揮できる「場」をつくること。

そう考えると、元請と協力会社との関係も変わってきます。

上から下へ指示するだけの関係ではありません。

同じ現場を完成させる仲間です。

だから私は、

「仕事をさせている」のではない。
「仕事をしていただいている」。

という気持ちを大切にしていました。

環境を整えることも安全管理

安全管理というと、パトロール、KY、リスクアセスメント、保護具、ルールなどを思い浮かべます。

もちろん、どれも重要です。

しかし、それ以前に、

人が安全に働ける環境になっているか。

を見る必要があります。

そして、ここでも前回の「次を見る力」が生きてきます。

次に何が始まるのかを考える。

その時に何が必要になるのかを考える。

問題になりそうなことを先に取り除く。

そして協力会社が仕事をしやすい状態をつくっておく。

優秀な所長は、人を動かす前に環境を動かしている。

私はそう思います。

そして、環境を整えるだけでは、人が本当に力を発揮できる現場にはなりません。

そこにはもう一つ、大切なものがあります。

人と人との関係です。

私は現役時代、「現場は家族」だと思っていました。

次回は、ソフトボール大会、焼肉大会、餅つき大会、そして北海道の現場で協力会社の作業員をもてなした経験から、「現場は家族」という私の現場づくりについて考えてみたいと思います。

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