
仕事を手伝っていただいているパートナーとLINEで髪の色について話していました。
彼女は以前JRAで働いていたこともあり、人手が足りなければ応援に行く可能性があったそうです。そうなると、今の金髪を黒に戻さなければならない。
ところが、その話はなくなったとのこと。
私は今の金髪がよく似合っていると思っているので、
「じゃあ、もう少し金髪でいたら?」
と話しました。
すると返ってきたのが、
「紫にしようかな」
という言葉でした。
その瞬間、私の頭の中に浮かんだのが、
「紫=年配の女性」
というイメージです。
以前、彼女から「なぜ年配の女性に紫色の髪が多いのか」という話を聞いた記憶があります。
ところが、肝心の「なぜそうなのか」は忘れてしまっています。
理由は忘れているのに、
「紫の髪=年配の女性」
という印象だけが、しっかり頭の中に残っていたのです。
そのため私は、
「紫はあかんやろ」
という反応をしました。
ところが、そのあと彼女から「こんな感じ」と写真が送られてきました。
それを見た瞬間、
「めっちゃ可愛いやん。良いやん!」
私の判断は、あっさり変わりました。
「紫」という言葉だけで判断していた
あとから考えると、これは面白い心の動きです。
「紫」と聞いた瞬間、私は実際の髪型や色合いを見る前に、過去の記憶から判断していました。
以前聞いた話の詳しい内容は忘れている。それでも「紫=年配の女性」という印象だけが残り、それが判断の基準、つまりアンカーのような役割をしていたのでしょう。
人間は、何かを判断するとき、すべての情報を一から丁寧に検討しているわけではありません。
過去の経験や記憶、第一印象などを手掛かりにして、素早く判断します。
まさにSystem1の働きです。
今回の私も、
「紫」
↓
「年配の女性」
↓
「似合わないだろう」
↓
「紫はダメ」
と、ほとんど自動的に判断していたのだと思います。
写真一枚で判断が変わった
ところが、実際の写真を見たことで、それまで頭の中にあった「紫」と、目の前に示された「紫」がまったく違うことに気づきました。
紫といっても一色ではありません。
色の濃さも違えば、金髪との組み合わせでも印象は変わります。
さらに彼女から、
「金髪と紫は相性がいい」
「色が落ちていく途中もきれい」
と説明を受けると、私の中に新しい情報が加わっていきます。
最初は、
「紫はダメ」
だった判断が、
「それなら良いやん」
へと変わったわけです。
ここで大切なのは、最初の判断を変えることができたことだと思います。
思い込みを持つこと自体が問題ではない
人間ですから、思い込みを完全になくすことはできません。
むしろ、過去の経験や知識を使って素早く判断できることは、人間にとって必要な能力です。
問題になるのは、最初に下した判断にこだわってしまうことです。
もし私が、
「いや、紫は年寄りの色や」
と最初の考えに固執していたら、写真を見ても、自分の判断を正当化する材料ばかり探したかもしれません。
そこには確証バイアスまで加わってきます。
しかし今回は、
「ん? 思っていた紫と違う」
「これなら可愛い」
「じゃあ、最初の判断を変えよう」
となりました。
これは私がいつも大切にしているメタ認知にもつながります。
自分が何を見て、何を根拠に判断しているのかを、一度自分の外側から眺めてみる。
「今の判断は、目の前の事実から考えたものなのか?」
それとも、
「過去の経験や印象に引っ張られているだけなのか?」
と考えてみることです。
安全の世界にも同じことがある
これは髪の色だけの話ではありません。
現場でも、私たちは知らず知らずのうちに過去の経験をアンカーにして判断しています。
「この作業は何度もやっているから大丈夫」
「この設備は昨日まで問題なかったから今日も大丈夫」
「ベテランがやっているから大丈夫」
「この程度なら危なくない」
こうした過去の経験が判断の基準になってしまうと、今、目の前で起きている変化を見落とす可能性があります。
昨日まで安全だったことと、今日も安全であることは同じではありません。
作業員が違うかもしれない。
天候が違うかもしれない。
設備の状態が変化しているかもしれない。
周囲の作業状況が変わっているかもしれない。
だからこそ、
Stop ― いったん止まる。
Look ― 今の状況を見る。
Think ― 本当に大丈夫か考える。
この一連の行動が重要になります。
過去の経験を否定する必要はありません。
経験は大切です。
しかし、過去の経験だけで「今」を決めないことがもっと大切なのです。
「そうか、違ったな」と言えること
今回の出来事は、たった髪の色の話です。
「紫はダメやろ」
と思っていた私が、写真一枚を見て、
「めっちゃ可愛いやん」
に変わった。
でも、こういう小さな出来事の中にも、人間の判断の仕組みがよく表れています。
私たちは誰でも、何らかの思い込みやバイアスを持っています。
大切なのは、それをゼロにすることではありません。
新しい情報が入ってきたときに、
「あれ? 自分が最初に思っていたのと違うな」
と気づき、
「そうか。じゃあ判断を変えよう」
と修正できることです。
それがメタ認知であり、柔軟な判断につながります。
そして安全管理でも、この「判断を更新する力」はとても重要です。
今日の教訓。
紫と聞いただけで判断してはいけない。
そして現場でも、
「いつも大丈夫」と思ったときほど、もう一度、今を見て考える。
彼女との何気ないLINEのやり取りから、また一つ、自分自身の「脳のクセ」を見つけることができました。