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安全心理学3 ―ちょっと待てよがSystemⅡ―

ブログ

2026.10.07

月曜日と火曜日は、System1について考えてきました。

System1は、私たちが毎日の生活や仕事を効率よく行うために欠かせない働きです。

慣れた動作を自然に行う。

経験から素早く判断する。

違和感を瞬間的に感じ取る。

こうした働きは、すべて私たちの仕事を助けてくれます。

しかし一方で、

「いつも大丈夫だった」

「これくらいなら問題ないだろう」

と、そのまま進んでしまうこともあります。

そこで必要になるのが、

「ちょっと待てよ」と立ち止まって考えることです。

この働きを心理学ではSystem2と呼びます。

System2は、じっくり考える脳

例えば、

初めて行く場所で地図を見る。

難しい計算をする。

新しい機械の操作方法を確認する。

作業手順を一つずつ読みながら進める。

このようなとき、私たちは自然には動けません。

一度立ち止まり、

「どうすればいいだろう」

と考えます。

これがSystem2の働きです。

System1が「いつもの自動運転」だとすれば、

System2は、

「自分でハンドルを握って考えながら運転する状態」

と考えると分かりやすいと思います。

初めての作業ではSystem2を使っている

新人の頃を思い出してみてください。

初めて工具を使ったとき。

初めて機械を操作したとき。

初めて現場に入ったとき。

おそらく、かなり頭を使っていたはずです。

「これで合っているかな」

「次は何をするんだろう」

「このやり方で大丈夫かな」

と、一つひとつ確認しながら作業していたと思います。

この状態では、System2がよく働いています。

ところが、同じ作業を何度も繰り返していると、少しずつ考えなくてもできるようになります。

最初はSystem2で行っていた作業が、経験を重ねることでSystem1へ移っていくのです。

これは人間の学習として自然なことです。

安全では、System2を呼び戻す必要がある

問題は、慣れた作業の中で変化が起こったときです。

例えば、

いつもと違う作業員が入っている。

材料の置き場所が変わっている。

足場の状態が昨日と違う。

機械から少し変な音がする。

雨で床が濡れている。

このような変化があっても、System1は、

「いつもの作業」

として進めようとすることがあります。

そこで必要なのが、

「ちょっと待てよ」

です。

「昨日と何か違わないか」

「このまま作業して大丈夫か」

「何か危険が増えていないか」

と、一度考え直す。

ここでSystem2が働きます。

「気づく」だけでは足りない

現場では、

「何となく気になる」

「少しやりにくい」

「いつもと違う感じがする」

ということがあります。

これはSystem1が違和感を感じ取っている状態とも考えられます。

しかし、

「まあ大丈夫だろう」

とそのまま進めば、そこで終わってしまいます。

大切なのは、その違和感をきっかけに、

System2へ切り替えることです。

「なぜ違和感があるのか」

「何がいつもと違うのか」

「この違いが危険につながらないか」

と考えてみる。

System1が出した「何か変だ」という信号を、System2で確認する。

この組み合わせが安全ではとても重要です。

Stop-Look-ThinkはSystem2を呼び起こす

私は安全を考えるとき、

Stop-Look-Think

という考え方をよく使います。

Stop
一度止まる。

Look
周囲を見る。

Think
考える。

非常に単純ですが、この流れには大きな意味があります。

人間は、そのまま行動しているとSystem1で進みやすくなります。

そこで一度、

Stop

を入れる。

動きを止めることで、自動運転に区切りをつけます。

そして、

Look

周囲の状態を改めて見る。

最後に、

Think

「このままで大丈夫か」

と考える。

これはまさに、System2を働かせるための方法です。

指差呼称も同じ考え方

指差呼称も同じです。

ただ目で見るだけでは、System1で処理してしまうことがあります。

しかし、

対象を見る。

指を差す。

声に出す。

「○○、ヨシ!」

と確認する。

この動作を入れることで、

「本当にヨシなのか」

と確認する瞬間が生まれます。

何となく見て終わるのではなく、意識して確認する。

これもSystem2を呼び起こす一つの方法と考えることができます。

ただし、いつもSystem2では疲れてしまう

ここで大切なことがあります。

安全のためには、

「いつもSystem2で考えればいい」

というわけではありません。

System2は、System1に比べて頭を使います。

一つひとつ考えるので時間もかかります。

すべての作業でSystem2を使っていたら、仕事は進みません。

人間は疲れてしまいます。

だからこそ大切なのは、

System1とSystem2を使い分けることです。

いつもの作業はSystem1で効率よく進める。

しかし、

何か変わった。

何かおかしい。

危険がありそうだ。

初めての作業だ。

迷いがある。

そのようなときには、一度立ち止まってSystem2を使う。

この切り替えが大切なのです。

「分からない」はSystem2を使う合図

新人だけでなく、ベテランにも、

「分からない」

「判断に迷う」

という場面はあります。

そのとき、

「たぶん大丈夫だろう」

と進めるのではなく、

一度止まる。

確認する。

人に聞く。

手順書を見る。

こうした行動を取る。

これも立派な安全行動です。

「分からない」と感じたこと自体が、

System2を使いなさいという脳からの合図

だと考えてもよいと思います。

今日覚えてほしいこと

System2とは、

一度立ち止まり、意識して考える思考

です。

初めての作業。

いつもと違う状況。

違和感があるとき。

判断に迷ったとき。

このような場面では、System1の自動運転のまま進まず、

「ちょっと待てよ」

とSystem2を働かせることが大切です。

安全とは、いつも慎重にゆっくり仕事をすることではありません。

普段はSystem1を上手に使い、

必要なところでSystem2へ切り替える。

この使い分けが大切なのです。

では、なぜ人間はSystem2をずっと使い続けることができないのでしょうか。

明日は、

「考え続けると疲れる――なぜSystem2は長く続かないのか」

について考えてみたいと思います。

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