濵口労働安全コンサルタント

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現場力を高める基本に立ち返る ~先輩の教えから学ぶ~

建設現場の所長として、また安全を守る責任者として、私が大切にしてきた「現場主義」は、ある先輩からの言葉に根ざしています。その言葉が、私の指針となり、今でも現場での取り組みに影響を与えています。

先輩からの教え:「協力会社に対する姿勢」

その先輩はこう言いました。

「協力会社に対して、仕事をさせてやっているなんて思うな。仕事をしていただいているんだ。俺たちは彼らが仕事をやりやすいように段取りをするのが仕事だ。」

この言葉を聞いたとき、私の中で「元請けの仕事とは何か」という考えが変わりました。協力会社は、ただの下請けではなく、私たちと同じ目的に向かって働く大切な「パートナー」です。そして元請けの責任者として、彼らが最大限の力を発揮できるよう、環境を整えることこそが自分の仕事だと気づかされました。

実践としての「儲けさせてナンボ」

現場所長になった後、私はこの教えを現場での行動指針にしました。

  1. 協力会社を儲けさせる意識
    • 現場で働く協力会社が成果を上げ、その対価をきちんと受け取れるようにすること。
    • 無理なスケジュールや過剰な要求で負担をかけるのではなく、効率よく作業を進められる段取りを提供する。
  2. 発注者への対価交渉
    • 自分たちが協力会社にきちんと支払いをするためには、発注者からも適正な対価を確実に得る必要があります。
    • 私は発注者に対しても、「適切な価値には適切な対価を払うべきだ」という姿勢で交渉を行い、その自信を持ち続けていました。
  3. 後輩への指導
    • 後輩には、「やった仕事に対して正当な対価を払えない現場所長はダメだ」ということを繰り返し伝えてきました。現場の力は、こうした基本的な信頼と誠意の上に成り立つのです。

現状:現場力の低下とその背景

現在、多くの現場で余裕のない状況が見受けられます。タイトなスケジュール、予算の圧縮、IT導入の進展など、様々な課題が複雑に絡み合っています。

  • ITの導入
    ITツールは確かに便利ですが、それを使いこなすためには現場の実情を理解し、適切に活用する力が求められます。しかし、ツールが現場力を補うものではなく、使い手の能力がなければ「宝の持ち腐れ」になってしまいます。
  • 現場力の低下
    現場での「人の力」、すなわち段取り力やコミュニケーション能力が低下していることも懸念されています。基本を見失い、効率だけが重視される現場では、働く人々のモチベーションや信頼が損なわれる可能性があります。

基本に立ち返る:段取り8分を徹底せよ

現場力を高めるためには、まず基本に立ち返ることが重要です。建設現場の基本ともいえる「段取り8分」を改めて徹底する必要があります。

  • 段取りの重要性
    「段取り8分」とは、仕事の8分は事前準備や計画で決まるという意味です。現場作業をスムーズに進めるためには、以下のような段取りが不可欠です。
    • 協力会社との事前打ち合わせ
    • 資材や機械の配置計画
    • 危険箇所の把握と安全対策
  • 段取りがもたらす効果
    適切な段取りを行うことで、現場の混乱や無駄を防ぎ、作業員が安心して働ける環境を整えます。結果として、作業効率が向上し、協力会社の利益にもつながります。

まとめ:現場力を取り戻すために

先輩から教わった「協力会社を尊重し、彼らの仕事がしやすい環境を整える」という教えは、今の時代にも変わらず重要です。
現場力の低下を嘆くだけでなく、基本に立ち返り、「段取り8分」を徹底することで、安全で効率的な現場運営が可能になります。

元請けとしての役割を再確認し、協力会社をパートナーとして尊重する姿勢を持ち続けること。それが、現場の力を高め、働く全ての人が幸せになれる現場づくりの第一歩です。

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