濵口労働安全コンサルタント

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神戸・三宮 クレーン衝突事故 ——「あり得ない」が起きた現場

神戸・三宮で発生したクローラークレーンによるビルへの衝突事故。
報道では「倒壊事故」といった見出しも見られましたが、実態は「クレーンのブームがビルに接触した衝突事故」です。

私はこの事故に対して、率直に言います。
「これは、極めて魔訶不思議な事故」
「常識では考えられない事故」
「なぜ起きたのか、まったく説明がつかない事故」です。

そもそも、クローラークレーンの構造上「衝突するはずがない」

今回のクレーンは、クローラークレーン。
特徴は次の通りです。

・ブームは固定構造(伸縮しない)
・吊り荷は無し(衝突時点)
・設置場所はビルから道路を挟んだ対面

普通に考えれば、クローラークレーンのブームが道路を超えて向かい側のビルに接触するというのは、ほぼ起きようがない事故です。

では、どうやって接触したのか。考えられるパターンは限られています。

衝突パターン① クレーンをビル側に寄せたまま、ブームを低く倒した状態で接触

衝突パターン② ブームを倒しながら、クローラーでビル側に近づいた

衝突パターン③ その混合、倒しつつ接近

しかし、どのケースでも「誰かが気づくはず」

ここで疑問です。

・現場周囲に誘導員や職員はいなかったのか?
・接触直前に誰も声を上げなかったのか?
・施工範囲外への進入警報のような管理措置は無かったのか?

特に土木工事や都市部の工事では、施工範囲外に出ればアラームや警報が鳴る管理システムは珍しくありません。
それすら無い?
仮にあっても止められなかった?

…だとすれば、現場の管理体制そのものに大きな問題があるとしか言いようがありません。

この事故に求められるのは「再発防止」ではない。「原因の徹底解明」です。

安全担当者の皆さんに強く伝えたいのは、こういう事故を「ヒューマンエラー」で片付けてはいけないということです。

これは「管理の仕組み」「作業計画」「リスクアセスメント」の問題。
・誰が指示したのか
・なぜ接触したのか
・なぜ誰も止められなかったのか
・どこに想定外があったのか

これらが解明されない限り、再発防止策も意味を持ちません。

最後に —— 現場を知る者の違和感

私は現場に長年立ってきた人間として言います。
今回の事故は、
「クレーンが倒れた」
「吊り荷がぶつかった」
そういうレベルではありません。

これは「衝突するはずがない場所で、衝突した事故」です。
まさに、安全管理が問われる現場。
原因究明が求められる事故。

だからこそ、中途半端な発表では終わらせてほしくない。
現場に立つすべての人のために。
未来の安全のために。

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