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心理的安全性が無い企業の顛末2 三菱電機

三菱電機が2021年10月1日に公開した、品質不正問題に関する調査報告書。そこには、名古屋製作所可児工場(岐阜県可児市)と長崎製作所(長崎県時津町)で長年にわたって続いた不正について、詳細な原因分析がされている。外部弁護士らでつくる調査委員会は、三菱電機の従業員5万5000人を対象にアンケートを実施し、メールでの情報提供も呼びかけた。その結果、集まった不正に関わる問題報告は2305件にのぼった。調査委は2022年4月をメドに調査完了を目指す方針だ。全容解明はこれからだが、291ページにおよぶ今回の報告書には、退職者を含め従業員や役員190人にヒアリングした内容が記されている。それらの証言から、長期にわたって不正を放置してきた組織内部の問題が大きく4つある。

問題①開発遅れへのプレッシャー 報告書にある社員の声

「何度もスケジュールが遅れたことで、その度に上長が叱責され、これ以上遅延する旨を言い出しづらいという気持ちがあった」「これ以上のスケジュール遅延は許されないという強いプレッシャーを感じており(以下略)」

「(内部通報などで不正を)言ってしまったらどれだけ話が大きくなってしまうのだろうかと怖くなり、言えなかったという面はある」

問題②品質よりも業績優先

従業員の証言からは、品質よりも売り上げや採算の確保を優先してきた傾向も見て取れる。鉄道用装置を製造していた長崎製作所では、本来行わなければいけない量産時の試験を行わず、製品開発時の試験データを流用していた。

「前任者に『いままで、これでやってきたんで。このとおりやりなさい。』と言われ、プログラムの使用を引き継いだ」

「設備がないため、是正しようのない問題であり、課長以上の管理職にバレて事が大きくなるのが嫌だった」

問題③遅すぎる情報共有

三菱電機では2016年、三菱自動車による軽自動車の燃費不正発覚を受け、同様の不正がないかを調べる品質点検が行われた。その間に発覚したのが、完全子会社のトーカンで起きた品質不正だった。

トーカンは、エスカレーターの手すりや電子機器用のゴム製品を製造している。今回の一連の不正問題が発覚する前の2018年、顧客と契約した規格値を逸脱した製品を出荷していたことが判明した。社内で不正が認識されたのは2018年2月。しかし、対応は遅々として進まなかった。

報告書によると、不正がわかってほどなく、三菱電機でトーカンを所管するビルシステム事業本部をトーカンの品質保証部長、技術部長が訪問。同本部のビルシステム業務部長らに報告した。しかし、業務部長らは3月末をメドに顧客への説明方法を考えるよう指示しただけで、役員である本部長への報告をしていなかった。

問題④上司に対する不信

一連の不正は各現場の従業員によって引き継がれてきたが、工場や製作所内で共有されるだけで、経営陣などにまでは共有されなかった。その根底にあるのが、部下が上司を信頼できていない組織風土だ。

「長崎製作所には、『言ったもん負け』の文化のようなものがある。改善を提案すると、言い出した者が取りまとめになり、業務量の調整もしてもらえないので、単純に仕事が増える」

「上司は忙しすぎて、提案をしても聞いてくれないので提案をしないことにした。部長と課長は忙しすぎて電子メールも資料も見ていない」

「部下が上司に気軽に相談できる環境ではない。相談しても、『それでどうするのか。』と逆に問い詰められる」「悪い情報を上げても組織的な対策がなされず、結局自分達に跳ね返って負担が増えるだけである」

四つの問題点のまとめの部分が問題④になります。三菱電機は定期的に従業員の満足度調査を行っています。調査項目に「自部門では、オープンで素直なコミュニケーションがなされている」という質問があり、従業員は全社平均のー2ポイントなのに対して、課長級は+17ポイント、部長級では+25ポイントと、社員との意識の乖離が進んでいました。ここには管理職としてグループをまとめている正常性バイアスが効いています。まとまっていないことにまともに向き合っていなかったことがここに出ているのです。

三菱電機に最も必要なのは、心理的安全性になります。まずは、管理職がその意義をしっかり学び、その必要性を自覚することから始まります。第三者委員会のような組織を設け今後三菱電機では社内改革が進むのでしょうが、そこで、心理的安全性が話されないようでは・・・・変革は無いと考えます。

 前回の、みずほ銀行の事案でも話しましたが、大手企業だけの問題ではありません。再度、話しますが、心理的安全性はグループにチームに必要な考え方です。大手企業、中小企業違いではありません。建設現場での5,6名のチームにも必要な考え方になります。

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