

「命知らず」が許される現場で、何を守れるのか
最寄り駅から現場へ向かうわずか数百メートルの道のり。そこを歩いているだけで、またしても目を疑うような光景に出会いました。現場は大型流通センターの建設工事。工程は終盤、西棟はほぼ仕上げ段階に入っています。
フルハーネス義務化はどこへ? 屋根上作業の驚きの姿
スロープ上に据えられたスカイマスター(高所作業車)。その先端から屋根へと乗り移る作業員の姿を見たとき、思わず立ち止まりました。
使用しているのは、なんと胴ベルト型の安全帯。
しかも、屋根に乗り移るその瞬間、安全帯は未使用。
これでは命綱でも何でもありません。落下すれば命はない。その危険を理解しないのか、それとも「慣れ」で麻痺してしまっているのか。もはや命知らずというより、命軽視です。
歩道占有、法令違反、誰も気にしない現場
この現場では、工事事務所の解体も始まっています。仮の事務所を近くの空き地に新たに設置していましたが、そこでもまた疑問が。
資材搬入のために歩道へ敷き鉄板を設置し、機材を運搬している。しかし、歩道占有の届け出は無し。つまりこれは、単なる安全配慮不足ではなく、法令違反です。
・安全無視
・法規無視
・管理者の意識無し
この3点セットが揃ってしまえば、もはや何を守っている現場なのか分かりません。
安全担当者への問いかけ
この現場を見て、改めて安全担当者の皆さんに問いたいのです。
・フルハーネスの義務化は「書類上」だけで終わっていませんか?
・高所作業の装着確認は、誰が、いつ、どこで行っていますか?
・現場作業員に「落ちたら死ぬ」という現実が伝わっていますか?
・安全だけでなく、法令順守が現場のルールであることを指導していますか?
ルールを守ることは「面倒」ではない。命を守る「最低条件」です。
安全は「意識の高い人だけがやるもの」ではありません。
安全は「全員が守らなければならない前提条件」です。
そして法令順守は、安全管理の入り口です。
現場の末端で起きていることは、必ず企業の安全管理体制の映し鏡です。現場が緩めば、会社全体が緩む。逆に言えば、現場で当たり前を徹底できる企業こそが、信頼される企業です。
今日、歩きながら思ったこと。
「何が正しいのか、誰も分かっていない現場」ほど危険な場所はない。
安全担当者の皆さん、もう一度、自社の現場を見直してみてください。
そこに、命知らずの作業員はいませんか?
そこに、法令違反を見過ごしている現場管理者はいませんか?
安全は、現場でつくるものです。
でも、その意識をつくるのは、あなたたち安全担当者の役割なのです。