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フルハーネス安全帯、装着すればいいという誤解

建設現場での高所作業に欠かせない命綱、それが「フルハーネス型安全帯」です。しかし、私は今日もまた、正しく装着されていないフルハーネスを着けた作業員たちを多く目にしました。あまりにも基本が守られていない現状に、怒りすら覚えます。

正直に言えば、呆れて物が言えません。

「これが命を守るための装備なのか?」と疑いたくなるような装着状態を見かけるたびに、情けなくなります。

フルハーネスは着ければ良い、ではない

フルハーネス安全帯は、単に体に装着するだけで命を守れる装備ではありません。正しい位置に、正しい順序で、体にフィットするように装着しなければ、その本来の性能を発揮することはできないのです。

  • 胸ベルトの高さ
  • 太もものストラップの締め具合
  • 背中のD環(ランヤード接続部)の位置
  • 落下時に負荷が分散されるような全体の調整

これらを誤れば、落下したときに命を守るどころか、重大な内臓損傷や窒息すら引き起こす危険があります。

使用には「特別教育」が義務

フルハーネス型安全帯を使用して高所作業を行うには、法令により「フルハーネス型安全帯使用に係る特別教育」の受講が義務付けられています。この教育では、装着方法だけでなく、ハーネスの種類、点検方法、落下時の衝撃や対処法など、命を守る知識が学べるのです。

しかし、現場では「講習を受けたから」「支給されたから」と、装着方法を自己流に済ませてしまっている例が後を絶ちません。

私の経験と現場での実践

私は前職で橋梁工事に携わり、橋の上での測量や作業を日常的に行ってきました。安全帯を着けなければ、足を踏み外せば数十メートルの高さから落ちるような環境で働いてきました。

だからこそ、フルハーネスの「正しい使い方」を身体で理解していました。講師として指導する際も、単なる装着の「形」ではなく、「命を守る装着方法」であることを厳しく教えてきました。

現場講義では、必ず受講者の装着を一人ひとり確認し、間違いがあれば即座に修正させました。なぜなら、装着ミスは即「命の危険」に繋がるからです。

大手企業のポスターにすら間違いが

私が最も強い危機感を抱いたのは、ある大手建設会社の安全ポスターでした。そこには社長がフルハーネス安全帯を装着した姿が写っていましたが、明らかに間違った装着でした。胸ベルトの位置が高すぎる、ランヤードの接続が適切でないなど、安全教育の象徴として掲げるにはあまりにお粗末です。

「形だけ」「見せるため」のフルハーネスでは、誰の命も守れません。

その無責任さに、あきれ果てて、悲しみすら感じます。

最後に

フルハーネス型安全帯は命を守る装備である以上、その取り扱いには絶対の責任が伴います。「着けていればOK」ではない。「正しく着けて、使って初めて安全になる」のです。

私は怒っています。

そして、情けない、呆れてものも言えない、そんな気持ちを抱えながら、それでも声を上げなければならないと思っています。

安全管理者として、教育者として、命を守る責任を放棄したかのような現場や企業姿勢に対し、警鐘を鳴らし続けます。この記事が、フルハーネス装着の本質に立ち返るきっかけになることを願ってやみません。

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