

危険感受性
〜人によって異なる「危険の感じ方」を知る〜
職場の安全管理において、「危険だから気をつけろ!」と言っても、全員が同じように危険を感じて行動を改めるわけではありません。それは、人それぞれの「危険感受性」が異なるからです。
例えば、高所作業を例に考えてみましょう。ある人は2メートルの高さでも恐怖を感じ、安全帯をしっかりと装着します。しかし、別の人は10メートルの高さでも平気で歩き回り、安全対策を軽視することがあります。この違いは、経験や性格、過去の成功体験・失敗体験などによって形成されます。
危険感受性とは何か?
危険感受性とは、どれだけ早く・強く・正確に危険を察知できるかを示す指標です。これが高い人は、ちょっとしたリスクでも素早く気づき、慎重に行動します。一方で、低い人は危険を過小評価し、無意識のうちにリスクの高い行動をとることがあります。
しかし、「危険感受性が低い=怠慢」というわけではありません。単に、危険を感じる基準が違うだけなのです。この違いを無視して、危険を感じない人に「危険だからやめろ!」と何度言っても、本人にはピンと来ないでしょう。まずは、その人の危険感受性を理解することが大切です。
なぜ危険感受性の測定が必要なのか?
現場での事故防止には、個々の危険感受性を把握し、それに応じた指導や対策を講じることが重要です。例えば、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 危険感受性が低い人
- 危険な行動を繰り返しがち
- 事故の予兆に気づきにくい
- ルールを軽視する傾向がある
- 危険感受性が高い人
- 必要以上に慎重になり、作業効率が下がる
- 過度なストレスを感じることがある
- 周囲の無関心さに不満を感じる
このように、危険感受性の違いは安全管理の課題として無視できません。そのため、まずは測定を行い、現場の状況を把握することが必要なのです。
危険感受性の測定方法
危険感受性は、いくつかの方法で測定できます。
- チェックリスト方式
- 危険な状況の画像や文章を提示し、「どれくらい危険と感じるか」を評価してもらう。
- 結果を分析し、個人ごとの危険認識の傾向を把握する。
- シミュレーションやVR体験
- 実際の作業環境を再現し、どのタイミングで危険を察知できるかを調査する。
- 安全行動を取るまでの反応速度を測定する。
- 行動観察
- 実際の作業中に、安全対策をどの程度意識しているかを観察する。
- 危険予測能力や回避行動の有無をチェックする。
測定結果を活かした安全対策
測定を行った後は、結果に応じた指導や教育を実施しましょう。
- 危険感受性が低い人には…
- 危険体験教育を実施し、実際にヒヤリ・ハットを体感してもらう。
- ルールの理由を丁寧に説明し、「なぜ危険なのか」を理解してもらう。
- 危険感受性が高い人には…
- 「安全に対する意識が高いことは良いことだ」と伝えつつ、過度なストレスを抱えないよう指導する。
- 危険感受性が低い人への指導役を担ってもらう。
まとめ
人によって危険感受性は異なります。これを理解せず、ただ「危険!危険!」と叫んでも伝わりません。まずは個々の危険感受性を測定し、それに応じたアプローチを考えることが、安全意識を高める第一歩となります。
現場の安全を守るために、「人の危険感受性の違いを知ること」から始めてみませんか?
『安全を科学するコンサルタント』濵口労働安全コンサルタント事務所では、科学的データーを使用し効率的・効果的な安全管理を目指します。