濵口労働安全コンサルタント

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安全は最後まで—労働安全衛生規則の理解を問う現場から

最寄り駅までの道すがら、流通センター建設工事現場を通りかかる。大きな倉庫が2棟建設されており、西側はほぼ竣工状態。東側も工事終盤を迎え、屋根工事が始まっている。いよいよ最後の仕上げに入る段階だ。

屋根端部の安全対策に欠ける現場

屋根には飛散防止のためか、単管が立てられネットが張られている。しかし、単管には手摺りが設けられていない。これは、労働安全衛生規則(以下、安衛則)上、大きな問題だ。屋根端部は高所作業の危険が最も高い箇所の一つであり、適切な墜落防止措置が求められる。

労働安全衛生規則に基づく適切な措置とは

安衛則第518条では、高さ2m以上の箇所で墜落の恐れがある場合、安全帯または手摺りなどの措置を講じるよう定められている。特に、屋根端部では次のような対策が必要となる。

  1. 手摺りの設置
    • 上下二段の手摺り(上段85~115cm、下段40~60cm)を設置し、作業員の墜落を防ぐ。
    • 支柱の間隔は2m以内とし、強度を確保する。
  2. 巾木またはネットの設置
    • 足元の滑落を防ぐため、巾木(高さ10cm以上)を設置するか、安全ネットを併用する。
  3. 安全帯の使用
    • 手摺りの設置が難しい場合、フルハーネス型安全帯を適切な支点に固定して作業を行う。

なぜ最後まで安全が守られないのか?

この現場では、工事終盤に至っても、基本的な墜落防止措置が徹底されていない。安全意識の低さもあるが、「最後の仕上げだから大丈夫」「短時間の作業だから手摺りは不要」といった心理が背景にある可能性が高い。しかし、事故はまさに「あと少し」「もう終わる」という油断が生じたときに発生するものだ。

また、建設現場では工期に追われることが常だが、安全を軽視しては本末転倒である。作業者の命を守るためにも、企業は安衛則の遵守を徹底し、施工管理者は安全対策が適切に施されているか最後まで確認する責務がある。

まとめ

建設工事は、竣工間近になるほど「最後のひと踏ん張り」で安全対策が疎かになる傾向がある。しかし、安全は工事の最初から最後まで守られるべきものだ。屋根端部の手摺り設置のように、基本的な対策さえ適切に実施されていれば防げる事故は多い。

労働安全衛生規則は「形だけのルール」ではなく、現場の命を守るための最低限の基準である。工事終盤でも気を抜かず、安全管理を徹底することこそ、本当のプロの仕事ではないだろうか。

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