変わらない現場
工事現場の現実と安全の課題
我が家の近くで進行中の流通センター建設工事。長い間、この現場を見守ってきましたが、どうにも安全意識の欠如が目立ちます。工事が始まった当初から、いくつかの問題点を指摘してきましたが、返ってくるのは「本社の安全担当が日々努力しています」との形式的な返答ばかり。その場しのぎの対応に終始している印象を拭えません。
この会社は過去にデータ偽装問題で一時倒産の危機に追い込まれ、さらに子会社が脱税で起訴されるという経緯があります。その影響もあってか、現場の管理やモラルが徹底されていない様子がうかがえます。
労働安全衛生規則が守られていない実態
現場では、労働安全衛生規則の基本中の基本が守られていない状況が散見されます。具体的には以下のような問題があります。
•親綱の不適切な使用:親綱を2方向(直角方向を含む)で使っており、安全確保が不十分です。
•不適切なネット使用:安全ネットの代わりに土木用ネットが使用されている。強度や用途が全く異なるため、万一の場合に役立ちません。
•巾木の未設置:高所作業の足元に巾木がなく、工具や資材の落下リスクが放置されています。
•立ち入り禁止表示の欠如:危険区域への立ち入り防止措置がされておらず、第三者を含む事故のリスクが高いです。
これらはすべて、最低限守られるべき規則です。これすら守られていない現場では、重大事故が起きるのも時間の問題でしょう。
「腐ったリンゴ」の影響
問題の根本は、この会社の体質そのものにあります。「腐ったリンゴが入ったリンゴ箱は、腐ったリンゴを取り除いても、また新たなリンゴが腐る」という格言があります。組織の基盤が腐っていれば、現場にその影響が及ぶのは必然です。
安全文化が根付いていない組織では、いくら規則やマニュアルを整備しても、それを実行する力がありません。
現場改善への提案
このような現場の問題を改善するには、表面的な対応ではなく、組織全体の安全文化を構築する必要があります。そのためには以下のような施策が求められます。
1.経営陣のリーダーシップ:経営トップが安全の重要性を理解し、率先して取り組む姿勢を見せる。
2.徹底した教育と訓練:現場作業員だけでなく、管理者や本社スタッフへの安全教育を強化する。
3.外部の専門家による監査:第三者による定期的な安全監査を導入し、問題点を明確化する。
4.現場と本社の連携強化:現場の意見を吸い上げ、迅速に対応できる仕組みを整備する。
最後に
「安全はコストではなく、投資である」という考え方が、この会社に浸透する日は来るのでしょうか。変わらない現場に諦めを感じる一方で、これ以上の事故を防ぐために、社会全体で安全意識を高めていく必要性を痛感しています。
変化を期待しつつ、私たちも引き続き現場を注視していきます。
濱口労働安全コンサルタント事務所