濵口労働安全コンサルタント

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東京駅前八重洲一丁目再開発現場における鉄骨崩壊事故の考察

2023年9月19日、大林組を代表とする企業体が施工中の“東京駅前八重洲一丁目東B地区第一種市街地再開発事業建設工事”において発生した鉄骨崩壊事故は、作業員2名の尊い命を奪い、大きな衝撃を社会に与えました。事故原因として、鉄骨の重量計算ミスや支保工の強度不足、設計変更の影響などが挙げられていますが、これらの説明は十分と言えるでしょうか?

設計ミスが引き起こした背景

鉄骨の重量計算ミスが事故原因として報告されていますが、これは単純な人的エラーではなく、組織全体の設計プロセスに問題が潜んでいる可能性があります。設計段階では複数のチェックが行われるのが通常ですが、そのプロセスが適切に機能していなかったとすれば、内部の品質管理や監査体制の欠如が疑われます。また、設計変更が工事途中で行われた場合、その変更が現場に適切に共有され、安全性が十分に検証されなかったことも一因と考えられます。

支保工の強度不足と現場での認識

支保工が実際の荷重に耐えられる強度を持っていなかった点については、現場での施工管理が問われます。仮設支保工の組み立て時には、現場監督や作業員が設計図や仕様書に基づき、適切な施工が行われているかを確認する必要があります。しかし、今回の事故ではその確認が不十分であったことが示唆されます。大規模なプロジェクトでは、現場でのコミュニケーション不足や情報の行き違いが起こりやすいため、より厳密な管理が求められるはずです。

組織事故としての責任

この事故を単なる個人のミスとして片付けるのは危険です。大林組のような建設大手は、組織全体として安全管理体制を構築し、それを現場に浸透させる責任があります。設計、施工、監督の各段階での連携不足や、問題を見過ごしたチェック体制の甘さがあった場合、これは組織事故といえます。

今後の提言

本事故を受けて、大林組をはじめとする建設業界全体が以下のような対策を講じる必要があります。

  1. 設計プロセスの再構築
    • 重量計算や強度計算におけるダブルチェック体制を強化。
    • 設計変更時のリスク評価と現場共有を徹底。
  2. 施工現場での安全管理強化
    • 仮設支保工の設置時に第三者による安全性確認を義務化。
    • 作業員への定期的な教育や訓練の実施。
  3. 組織全体での安全文化の醸成
    • トップダウンでの安全優先意識の徹底。
    • 過去の事故の教訓を反映した内部研修の実施。

結び

今回の事故は、建設大手としての大林組の信頼を大きく損なう結果となりました。しかし、これを契機として、業界全体が安全管理の見直しに取り組むことは可能です。労働者の命を守るためには、個人の責任追及にとどまらず、組織全体で事故を防ぐ仕組みを構築することが不可欠です。本ブログでは、今後も労働安全に関する議論を続けてまいります。

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