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石綿被害の現状と私たちが考えるべきこと

12月12日の朝日新聞によると、石綿(アスベスト)による労災認定者数が2023年度に1,232人達したことが報じられました。この数字は単なる統計ではなく、一人ひとりの命が脅かされ生活が失われ、家族が悲しみに暮れる現実を示しています。この記事を通じて、石綿問題にあまり関心がなかった方々にも、この問題について考える契機となればと思います。

石綿とは何か? なぜ問題なのか?

石綿は、かつて建材や断熱材として広く使用されていた鉱物繊維です。その特徴である耐熱性や絶縁性が注目され、建築業界などで活躍していました。しかし、吸い込むことで深刻な健康被害を引き起こすことがわかり、現在では使用が禁止されています。

特に問題となるのが、以下のような疾患です:

  • 中皮腫:石綿の粉じんを吸入することで引き起こされる希少ながん。
  • 肺がん:長期間の石綿への曝露が主な原因。
  • 石綿肺:肺が硬化する病気で、呼吸困難を引き起こします。

これらの病気は発症までに数十年かかることがあり、過去に石綿が使用された建物が解体される現在、被害が表面化しています。

被害の拡大背景

今年度の労災認定者数が過去最大に達した背景には、いくつかの要因があります:

  1. 建物の老朽化と解体作業の増加
    古い建物に使用された石綿製品が解体作業中に飛散し、作業員や周辺住民が曝露しています。
  2. 認知の不足
    多くの人が石綿の危険性や具体的なリスクを正しく理解していないことが影響しています。
  3. 予防措置の不徹底
    法律で対策が義務付けられているものの、現場で十分に守られていないケースが報告されています。

石綿被害を防ぐために

私たちができることは何でしょうか?石綿被害を未然に防ぐための行動を以下にまとめます。

  1. 正しい情報を知る
    石綿の危険性や被害事例を知ることが第一歩です。建物の解体や改修作業に関わる方は特に注意が必要です。
  2. 適切な防護措置の実施
    解体作業中には以下の対策を徹底しましょう:
    • 作業者に防塵マスクや防護服を着用させる。
    • 作業エリアを囲い込み、飛散防止の湿式作業を行う。
    • 周辺住民への事前通知と適切な情報共有を行う。
  3. 法規制を守る
    「石綿障害予防規則」など、石綿に関する法律を遵守し、適切な調査・処理を行うことが事業者の責任です。
  4. 社会全体で問題意識を持つ
    被害者の声に耳を傾け、石綿被害の深刻さを周囲と共有することが、さらなる対策につながります。

まとめ

石綿による被害は「過去の問題」ではなく、現在進行形の課題です。今年度の労災認定者数の増加は、私たち一人ひとりがこの問題に向き合う必要性を強く訴えています。石綿に関する正しい知識を広めることで、さらなる被害を防ぐことができるはずです。他人事と捉えるのではなく、自分の家の屋根に使われている西洋瓦などにも石綿が使用されていることが多く、屋根の吹き替えに際しては、それ相応の処置が必要になります。

濱口労働安全コンサルタント事務所では、石綿対策に関する情報提供を行っています。この問題について少しでも関心を持っていただければ幸いです。安全な職場環境を目指して、共に取り組んでいきましょう!

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