静岡橋桁落下事故調査報告その3
令和5年7月6日に発生した国道1号清水立体尾羽第2高架橋の橋桁落下事故について、9月22日に国土交通省静岡国道事務所ホームページに事故調査員会報告書(中間とりまとめ)が公表された。今回の調査では、事故原因及び再発の防止について、調査、検討することを目的として行うものであり、事故の責任の所在を明らかにすることを目的に行うものではないとされている。
報告書から事故原因調査について内容を確認しながら、橋梁工事経験者として話をしてきました。今回の報告書では、上記にあるように再発防止を目的とし、責任の所在追及を目的としていませんが、今後へとつなげるため問題点を明らかにしていきたいと思います。
- 本質的安全設計であったか
リスクアセスメントを実施したのかと言った方が良いのかもしれませんが、今回の発注方法自体に問題はなかったのか?横取工法は良く取り入れられる工法であり珍しいものではありませんが、今回の方法は珍しい方法です。多くの方法は、橋脚、橋台間で横取を行います。そのため、降下作業は極わずかで済み、橋桁自体が落下する可能性は極わずかです。軌条から落下すること自体無いと言えるため、落下の可能性はかなり低くなると言えます。
今回も、箱桁の添接部で連結するのではなく単独であれば、若しくは連続桁でも連続桁をつないだ状態での横取ならば落下事故は防げたのではないかと思います。費用面でいえば高額になりますが安全面では安全です。本質的安全設計ではなかったと言えます。
- なぜ既設桁P4部海側の補強をしなかったのか
既設桁P4橋脚上海側の補強が何故行われなかったのか。右の図のように海側のサンドルは桁からはみ出す構造となっています。橋脚上と同程度の区域を仮設として設けることが出来なかったのか。安全性・作業性ともに低下する状態である。橋脚上からベントをくみ上げることは出来たのではないか、耳桁を使用し補強が出来たのではないかと。。このような状態で作業を行うこと自体安全ではないと考えます。この場合は、元請はどのように考えていたのか、発注者との協議はなされていたのか等、これからの展開を注視する必要があります。
- なぜスラブアンカーを切断しなかったのか
スラブアンカーは溶接で上フランジに取り付けられているものであり、構造部材ではない。一旦架設に支障になるため取り外すことは可能なものです。架設完了後に溶接で復旧すればよいだけであり、わざわざ残して作業を行ったことに大きな疑問がある。発注者が嫌がったのか、元請が気づかなかったのか。気が付かない事は考えづらく、発注者が承諾しなかったのではないか?この点も多く疑問が残ります。
今後、責任の所在が明らかになってくる。その時に私がここに書いている点が話されるのか、発注者の責任をあいまいにしたまま、施工業者の責任だけが問われるのか。本質的な問題まで話され公表されるのか。今後の展開についいても見ていきます。