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なぜ組織は「2:6:2」に分かれるのか

ブログ

2026.06.25

~人間の脳から見た安全管理の本質~

職場では昔から「2:6:2の法則」という言葉があります。

よく働く人が2割。
普通に働く人が6割。
なかなか動かない人が2割。

働きアリの研究でも似たような現象が見られることから、「組織は自然に2:6:2に分かれる」と言われています。

しかし私は、安全コンサルタントとして現場を見ている中で、この法則は単なる能力差では説明できないと感じています。

むしろ、その人の能力よりも、「脳がどのような状態で動いているか」の方が重要ではないでしょうか。

つまり、2:6:2は能力ではなく思考状態によって生まれる現象だと考えられます。


人間には二つの思考モードがある

心理学者ダニエル・カーネマンは、人間の思考を二つに分類しました。

システム1

直感的で速い思考

  • いつものやり方
  • 習慣
  • 思い込み
  • 自動運転

脳の負担が少なく、省エネルギーで行動できます。

システム2

ゆっくり考える思考

  • 本当に大丈夫か
  • なぜそうするのか
  • 他に危険はないか

論理的に考え、判断する状態です。

しかし、システム2は多くのエネルギーを使います。

人間の脳は本来、省エネを好むため、放っておけばシステム1を使おうとします。

つまり、人は意識しなければ自然と考えない状態に流れてしまうのです。


出来る2割とは何か

組織の中で「出来る人」と呼ばれる人たちは、常に周囲へアンテナを張っています。

  • 危険を予測する
  • 問題点を発見する
  • 改善策を考える
  • 周囲へ働きかける

これはシステム2を頻繁に使っている状態です。

安全管理で言えば、

「この作業手順で本当に大丈夫か」

「今日の風速で足場は問題ないか」

「この作業員は疲れていないか」

と考え続ける人たちです。

現場の安全を支えているのは、まさにこの層だと言えるでしょう。

つまり、出来る2割とは常に考え続けている人たちなのです。


中間の6割が組織を決める

実は最も重要なのは真ん中の6割です。

この人たちは決して能力が低いわけではありません。

ただ、人間の自然な特性として、

「周囲に合わせる」

という傾向を持っています。

上司が真剣なら真剣になります。

職長が手を抜けば手を抜きます。

周囲が指差呼称をすれば自分もします。

周囲がやらなければ自分もやりません。

つまり、この6割の人たちは「同調」する性質を持っているのです。

良い方向にも動きますし、悪い方向にも動きます。

安全文化を作る上で最も重要なのは、この6割なのです。

つまり、組織の質はこの6割がどちらに動くかで決まります。


出来ない2割とは何か

出来ない2割と言われる人たちも、必ずしも能力が低いわけではありません。

  • 指示を誤解する
  • 手順を飛ばす
  • 注意が散漫になる
  • 危険を軽視する

こうした行動が目立ちます。

しかし、その背景には、

  • 経験不足
  • 教育不足
  • 疲労
  • ストレス
  • 過信

など様々な要因があります。

つまり、「出来ない人」ではなく、「考える状態になれていない人」と考えた方が実態に近いのかもしれません。

つまり、この層も環境次第で変わり得る存在なのです。


本当に恐ろしい事実

この法則で興味深いのは、

「出来る2割だけを集めても、また2:6:2になる」

という点です。

優秀な人ばかりを集めた組織でも、

誰かがリーダーになり、
誰かがフォロワーになり、
誰かが遅れを取ります。

つまり、

2:6:2は能力の法則ではなく、

人間集団の自然現象

なのです。

人間は無意識のうちに、

「誰かが考えてくれているから、自分はそこまで考えなくていい」

という状態になってしまいます。

これが集団心理の恐ろしさです。

つまり、どんな組織でも思考の偏りは必ず生まれてしまうのです。


AIでは解決できない理由

最近はKY活動やリスクアセスメントにもAI活用が進み始めています。

しかし、AIがどれだけ優秀になっても、

「人間が考える」

という行為を代行することはできません。

AIが作ったKYシートをそのまま読んで終わるなら、

それはシステム1による思考停止です。

本当に必要なのは、

「この現場では何が危険なのか」

を一人ひとりが考えることです。

安全はシステムや書類で作るものではありません。

考える人によって作られるものなのです。

つまり、安全は人の思考によってしか成立しないのです。


安全管理者の本当の仕事

では、安全管理者や職長の仕事とは何でしょうか。

ルールを増やすことではありません。

書類を増やすことでもありません。

本当の仕事は、

6割の人たちのシステム2を起動させること

です。

例えば、

  • 朝礼で一言発言してもらう
  • KYを自分の言葉で書いてもらう
  • 指差呼称を実施する
  • 危険予知を話し合う
  • 声を掛け合う

こうした一見地味な活動です。

しかし、この「ひと手間」が脳を考える状態へ切り替えます。

つまり、安全管理とは人に考えさせる仕組みを作ることなのです。


おわりに

人間は考える生き物です。

しかし同時に、省エネを好む生き物でもあります。

だからこそ組織は自然に2:6:2へ分かれていきます。

安全管理とは、この人間の特性を否定することではありません。

人間は楽をしたがる。

人間は同調する。

人間は思い込む。

まず、その事実を理解することです。

その上で、考えるきっかけを現場へ仕掛ける。

私はそれこそが安全管理の本質であり、AIには真似のできない現場力だと思っています。

「人は情報不足で失敗するのではない。情報処理の限界によって失敗する。」

だからこそ、私たちは今日も現場で考え続けなければならないのです。

つまり、安全とは人が考え続けることで初めて守られるものなのです。

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