
「下位2割」は本当に能力が低い人なのでしょうか
前回は、「2:6:2の法則」について考えました。
そして、一つの疑問を投げかけました。
組織では、
上位2割が抜けても、新しい上位2割が現れる。
下位2割が抜けても、また新しい下位2割が現れる。
もしそうだとすれば、
「上位」「下位」とは、一体何を表しているのでしょうか。
私たちは人を評価しすぎていないでしょうか
「あの人は仕事ができる。」
「あの人は消極的だ。」
職場では、このような言葉をよく耳にします。
しかし、その人は本当に能力が低いのでしょうか。
もし能力だけが理由なら、部署が変わっただけで活躍するようになる人がいることを、どう説明すればよいのでしょう。
逆に、以前は活躍していた人が、新しい職場では本来の力を発揮できないこともあります。
つまり、人の評価は「能力」だけでは決まらないのです。
レヴィンの場の理論で考えてみる
前回ご紹介したレヴィンの「場の理論」では、
人の行動は、個人と環境の相互作用によって決まる
と考えます。
この考え方に立てば、「下位2割」という見方も変わってきます。
私は、
下位2割とは、能力が低い人ではなく、現在の環境で十分に力を発揮できていない人
ではないかと考えています。
例えば、
・入社したばかりの新人
・異動して仕事を覚えている途中の人
・失敗が続いて自信を失っている人
・相談しにくい雰囲気の中で働いている人
このような人たちは、本来の能力があっても、それを十分に発揮することはできません。
しかし、環境が変われば、その人が組織を支える存在になることは決して珍しくありません。
「人を変える」のではなく、「場を変える」
ここで、安全管理にも共通する考え方があります。
事故が起きると、
「もっと注意しなさい。」
「確認不足だった。」
と言われることがあります。
しかし、それだけで事故はなくなるでしょうか。
忙しすぎる工程。
相談しにくい職場。
報告すると叱られる雰囲気。
このような環境では、誰であってもヒューマンエラーを起こしやすくなります。
だからこそ、安全管理は「人を変える」ことよりも、「人が安全に行動できる環境をつくる」ことが大切なのです。
安全文化とは「人を育てる場」をつくること
私は、安全文化とはルールを増やすことではないと考えています。
安心して質問できる。
危険だと思ったら「止めましょう」と言える。
失敗を責めるのではなく、原因を一緒に考える。
そのような職場では、人は安心して力を発揮できます。
反対に、恐怖や叱責ばかりの職場では、本来の能力を持っている人でさえ萎縮してしまいます。
安全文化とは、人を選別することではありません。
誰もが力を発揮できる「場」をつくることなのです。
次回は「6割」が組織を変える理由を考えます
では、組織の中で最も重要なのは誰でしょうか。
私は、上位2割ではないと考えています。
本当に組織を変える力を持っているのは、真ん中にいる6割の人たちです。
この6割が、なぜ組織の未来を決めるのか。
そこには、人間が持つ「同調」という心理が深く関係しています。
次回は、認知心理学の「同調バイアス」と組織文化の関係について考えてみたいと思います。