
最近、自分に起きたヒューマンエラーを、このブログに書くようになりました。
郵便物を持たずに家を出ようとしたこと。用意していたヘルメット入りのカバンを忘れそうになったこと。持って上がるはずの物をリビングに置いたまま、自分の部屋へ戻ってしまったこと。
どれも大きな事故につながるような失敗ではありません。しかし、日常の中では誰にでも起こるヒューマンエラーです。
ところが、自分の失敗を振り返って文章にするようになってから、ヒューマンエラーが少しずつ減ってきました。
書くことで、自分の行動が見える
以前にも、お風呂上がりにリビングでくつろぎ、二階の自分の部屋へ戻る際、持って上がる物を忘れることが何度かありました。
今はリビングを離れる前に、
「忘れている物はないか」
と、一度周囲を見るようにしています。
朝も同じです。仕事の準備を終えて玄関を出る前に、カバンや書類、スマートフォンなど、必要な物がそろっているかを確認しています。
「忘れないように注意しよう」と漠然と考えるだけではありません。忘れやすい場面を知り、その場面になったら確認するようになったのです。
これは、自分の行動を少し離れたところから観察する「メタ認知」でもあります。
ヒューマンエラーを書き出すことで、
「自分はどのような場面で忘れやすいのか」
「何かを終えて次の行動へ移る時に、忘れ物が起こりやすいのではないか」
と、自分の行動の特徴が見えてきました。
失敗を記録することは、反省するためだけではありません。次にうまく行動するための材料になるのです。
SafetyⅡは、日常の「うまくいった」に目を向ける
従来の安全管理では、事故やヒューマンエラーが起きた後に原因を調べ、再発防止策を考えることが中心でした。これはSafetyⅠと呼ばれる考え方です。
もちろん、事故の原因を調べ、同じ事故を繰り返さないようにすることは大切です。
一方、SafetyⅡでは、事故が起きなかった日、仕事が無事に終わった日にも目を向けます。
なぜ、今日はうまくいったのか。
作業員は、どのような確認をしていたのか。
予定と違うことが起きた時に、どのように対応したのか。
安全な一日は、何もしなくても自然に生まれるものではありません。一人ひとりが周囲を見て、状況に合わせて小さな調整を重ねることで成り立っています。
私がリビングを離れる前に忘れ物を確認することも、出勤前に持ち物を確認することも、その小さな調整の一つです。
「注意しています」という言葉だけでは、具体的な行動は分かりません。
しかし、
「リビングを出る時に周囲を見る」
「玄関を出る前に持ち物を確認する」
と決めれば、注意が行動になります。
細かいことですが、このような日々の工夫を重ね、物事をうまく進めることがSafetyⅡにつながると考えます。
エレベーターで試した小さな予測
今日、ビルの一階からエレベーターに乗ろうとした時のことです。
ちょうど来たエレベーターには乗ることができました。しかし、すでに多くの人が乗っていました。
そこで私は、そのエレベーターには乗らず、次を待つことにしました。
多くの人が乗っているエレベーターは、途中の階で何度も止まる可能性があります。先のエレベーターが各階で止まっている間に、次のエレベーターが来れば、かえって早く目的の階へ到着できるのではないかと考えたのです。
しばらくすると、予想どおり次のエレベーターが来ました。私が乗ったエレベーターは途中で一度も止まらず、目的の階までノンストップで移動できました。
もちろん、ビルのエレベーターがどのような仕組みで配車されているのかは分かりません。次も必ず同じ結果になるとは限りません。
それでも私は、目の前の状況を見て、この後に起こることを予想し、いつもの行動を少し変えてみました。
レジリエンスは「先を読む力」でもある
レジリエンスという言葉は、一般には「困難から立ち直る力」と説明されます。
しかし、安全の分野では、問題が起きた後に立ち直る力だけではありません。
変化の兆しを捉え、これから起こることを予測し、状況に応じて行動を調整する力もレジリエンスです。
今回のエレベーターでの行動には、
- 多くの人が乗っている状況を見る
- 途中で何度も止まることを予測する
- すぐに乗らず、次を待つ
- 結果を確認し、次の判断材料にする
という流れがありました。
単に「新しいことに挑戦したからレジリエンス」ということではありません。状況を観察し、先を予測して、自分の行動を柔軟に変えたところに、レジリエンスの考え方があります。
現場でも行われている小さな調整
建設現場や製造現場でも、同じような調整は毎日行われています。
予定より風が強くなったので、揚重作業の順番を変える。作業場所が混み合っているので、他の作業が終わるまで待つ。作業員の表情がいつもと違うので、体調を確認する。資材の置き方に違和感を覚えたので、一度作業を止める。
これらは、決められたルールを守るだけでは対応できないことがあります。
現場の状況を見て、これから何が起きるかを予測し、必要に応じて行動を変える。この日々の小さな調整が、事故のない一日をつくっています。
最も大切なのは、うまくいかなかった時だけでなく、うまくいった時にも振り返ることです。
「今日は事故がなかった」で終わらせず、
「なぜ、今日はうまくいったのか」
「誰が、どのような判断をしたのか」
「どの工夫が安全につながったのか」
を言葉にする必要があります。
ヒューマンエラーを書き残すことで、私は自分の行動を注意するようになりました。そして、日常の中で予測し、試し、結果を確かめることも増えました。
大きな安全活動だけがSafetyⅡではありません。
忘れ物を防ぐための確認。混雑を見て一台待つ判断。違和感を覚えた時に、立ち止まって考えること。
このような小さな工夫の積み重ねこそが、自分と仲間を守る力になります。
皆さんの今日一日の中にも、物事をうまく進めるために行った小さな調整があったのではないでしょうか。