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― 黒潮大蛇行の終息で、今年の台風はどう変わるのか ―
令和8年5月29日、台風第6号がフィリピンの東を北上しています。まだ5月ですが、いよいよ台風の動きに注意を向ける季節となりました。
今回、私が気になっているのは、台風の進路予報だけではありません。
今年は、黒潮の流れが昨年までとは変わっている。
このことが、日本に接近する台風に何らかの影響を及ぼすのではないかと考えています。
もちろん、台風がどこへ進むかを決める主な要因は、太平洋高気圧や偏西風などの大気の流れです。黒潮が台風を直接、日本へ運んでくるわけではありません。
しかし、海と空は決して別々のものではありません。
暖かい海の上では空気も暖められ、多くの水蒸気が大気へ供給されます。そこに台風が通れば、勢力の維持や雨の降り方に影響する可能性があります。
今年は、その「海の状態」にも目を向けておく必要があるのではないでしょうか。
7年9か月続いた黒潮大蛇行が終わった
黒潮は、九州・奄美の間を通って太平洋に入り、日本の南岸に沿って房総半島沖へ流れる大きな暖流です。流れの速いところでは毎秒2メートル以上、幅は100キロメートルにも及ぶ、まさに海の中の大河です。
この黒潮は、平成29年8月から紀伊半島・東海沖で大きく南へ離れる「黒潮大蛇行」の状態となっていました。ところが、令和7年4月に大蛇行が見られなくなり、気象庁は同年8月、約7年9か月続いた過去最長の黒潮大蛇行が終息したと発表しました。
そして、令和8年5月中旬の気象庁の診断によると、黒潮は室戸岬や潮岬で接岸して流れています。また、海上保安庁も5月28日現在、黒潮が足摺岬、室戸岬、潮岬、大島から八丈島付近、房総半島南東岸などに接近しているとしています。
つまり、長く日本の南岸から離れていた暖かい海の流れが、現在は日本列島の太平洋側に近い場所を流れているのです。
台風が通る道の下に、暖かい海がある
ここで考えてみたいのが、台風と黒潮の関係です。
台風は、暖かい海から供給される熱と水蒸気をエネルギーにして発達します。黒潮は暖かい海水を運ぶため、その上では空気が暖められ、水蒸気も供給されやすくなります。
私は、ここに注目しています。
黒潮が日本の南岸に近づけば、黒潮に沿って暖かく湿った空気の帯ができる。そこへ台風が近づいた場合、台風は日本近海まで勢力を保ちやすくなったり、雨を強めたりするのではないか。
これは、単なる思いつきだけの話ではありません。
黒潮や黒潮続流が、熱や水蒸気の供給を通して台風や低気圧にどのような影響を与えるのかは、現在も研究が進められている分野です。国の研究課題でも、黒潮が台風や爆弾低気圧の発達・予測に与える影響は、防災上の重要なテーマとして扱われています。
また、気象研究所も、線状降水帯や台風による激しい気象現象を理解するうえで、海上から大気下層へ流れ込む水蒸気や、大気と海洋の相互作用を解明することが課題だとしています。
「黒潮に乗って台風が来る」のではなく
ここは、誤解のないように整理しておきたいと思います。
黒潮が台風の進路を決めるわけではありません。
台風を日本へ向かわせるかどうかを決めるのは、あくまで太平洋高気圧や偏西風などの大気の流れです。
しかし、進んできた台風の下に暖かい黒潮があり、そこから熱や水蒸気の供給を受ければ、台風は勢力を維持しやすくなる可能性があります。
たとえるなら、
台風のハンドルを握るのは上空の風。
しかし、台風に燃料を供給する道の一つが、暖かい黒潮かもしれない。
ということです。
今年、黒潮大蛇行が終息し、黒潮が日本の南岸に近い場所を流れていることが、台風の接近時にどのような影響を及ぼすのか。現時点で断定することはできません。
しかし、台風を見るときに、進路図だけでなく、その下にある海の流れや海水温にも目を向ける。これは、防災を考えるうえで大切な視点だと思います。
台風第6号を、今年最初の注意喚起として
令和8年5月29日現在、台風第6号はフィリピンの東にあり、気象庁から台風情報が発表されています。台風の予想進路や勢力は今後変わる可能性があるため、最新の情報を確認することが必要です。
まだ5月だから大丈夫。
台風は夏から秋のものだ。
そのように考えてしまうと、備えが遅れます。
建設現場や工場では、台風が接近してからでは間に合わない対策があります。
足場や仮囲い、看板、養生シート、屋外に置かれた資材、排水設備、電源設備、車両や重機の配置。これらは、天候が悪化する前に確認し、必要な措置を講じておかなければなりません。
特に建設現場では、台風が直接上陸しなくても、強風や大雨によって足場の倒壊、資材の飛散、法面の崩壊、冠水、感電などの危険が生じます。
海の変化にも目を向け、早めの備えを
今年の台風が、黒潮大蛇行の終息によって例年と大きく変わるのか。
それは、これからの状況を見なければ分かりません。
しかし、黒潮という暖かい海の流れが日本の南岸に近づいていること、そして、その暖かい海が台風の勢力や雨の降り方に影響する可能性があることは、頭に置いておく必要があります。
台風は、突然やって来るものではありません。
海で生まれ、暖かい海から力を受け、風に運ばれて近づいてきます。
だからこそ、今年は台風の進路だけでなく、黒潮の流れと海の温度にも少し関心を持って見てほしいと思います。
自然の変化に興味を持つことは、災害への備えの第一歩です。
台風シーズンは、すでに始まっています。
現場では、早めの点検と備えを進めてください。