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人が起こす事故を、人が防ぐ
濵口労働安全コンサルタント事務所では、安全大会や安全衛生大会での講話も行っています。
安全大会は、単に事故件数や法令を確認する場ではありません。現場で働く一人ひとりが、「なぜ事故は起きるのか」「自分ならどう行動するのか」を考え、安全を自分自身の問題として受け止める大切な機会です。
私は大阪大学大学院で認知心理学を学びました。その知見を土台として、現場で本当に役立つ安全講話を心がけています。
取り上げるテーマは、ヒューマンエラー、心理的安全性、コミュニケーションエラー、認知バイアス、そしてSafetyⅠ・SafetyⅡ、レジリエンスなどです。
難しい言葉を並べることが目的ではありません。現場で起こる「うっかり」「思い込み」「言ったつもり」「聞いたつもり」を、働く人が自分の経験と重ねながら理解できるよう、具体例を交えて丁寧にお伝えします。
ヒューマンエラーは、特別な人だけが起こすものではない
事故が起きると、つい「本人の注意が足りなかった」と考えがちです。
しかし、人は疲れます。急ぎます。慣れます。忘れます。そして、見えているつもりでも見落とします。
ヒューマンエラーは、能力の低い人や不真面目な人だけに起こるものではありません。経験豊富なベテランにも、責任感の強い職長にも起こります。
だからこそ大切なのは、「気をつけましょう」だけで終わらせないことです。
なぜ見落としたのか。なぜ確認を省略したのか。なぜ危険を感じながら作業を止められなかったのか。人の特性と作業環境の両方から考える必要があります。
事故を起こした人を責めるだけでは、次の事故は防げません。人が間違えることを前提にして、間違えても大きな事故にならない仕組みを作ることが、安全管理の基本です。
心理的安全性が、危険を早く表に出す
現場では、小さな異常や違和感に気づいた人がいても、言い出せないことがあります。
「忙しそうだから言いにくい」
「こんなことを言ったら怒られるかもしれない」
「自分だけ気にしすぎかもしれない」
「ベテランが大丈夫と言っているから黙っておこう」
こうした空気がある現場では、危険は表に出ません。
心理的安全性とは、何を言っても許されるという意味ではありません。危険、不安、ミス、疑問を、立場に関係なく言葉にできる状態です。
「少しおかしいと思います」
「この方法で本当に大丈夫ですか」
「もう一度確認してもよいですか」
こうした一言を言えることが、事故の芽を早く見つけることにつながります。
安全な現場とは、失敗した人を責めない現場ではありません。失敗や危険の兆候を隠さず、早く共有し、みんなで対策できる現場です。
コミュニケーションエラーは、現場のすき間で起きる
現場の事故には、コミュニケーションの行き違いが関係していることが少なくありません。
「伝えたつもりだった」
「分かっていると思った」
「聞いていない」
「言われたが、意味を違って受け取った」
作業内容が複雑になり、多くの職種や会社が関わるほど、このすき間は大きくなります。
特に危険なのは、言葉だけで確認を終えた時です。
「分かりました」ではなく、相手に作業内容や危険ポイントを言い返してもらう。
「あそこを注意して」ではなく、場所と危険内容を具体的に伝える。
変更があった時は、関係者全員に届いたか確認する。
安全は、指示を出した時点では完成しません。相手が正しく理解し、現場で行動できて初めて安全につながります。
SafetyⅠからSafetyⅡへ
従来の安全管理は、事故や不具合をなくすことを中心に考えてきました。これはSafetyⅠと呼ばれる考え方です。
事故が起きた時に原因を調べ、ルールを作り、再発を防ぐ。もちろん、これは今でも大切な安全活動です。
しかし、現場では毎日、予定通りにいかないことが起こります。
天候が変わる。
工程が遅れる。
人員が変わる。
設備に不具合が出る。
予想していなかった作業が発生する。
それでも、多くの日は事故なく仕事が進んでいます。
SafetyⅡは、「なぜ事故が起きたのか」だけでなく、「なぜ普段はうまくいっているのか」に目を向ける考え方です。
職長が早めに危険を察知していた。
作業員同士が声を掛け合っていた。
予定変更に合わせて作業方法を変えた。
危険を感じた人が作業を止めた。
こうした日常の工夫や調整の積み重ねが、現場の安全を支えています。
安全とは、単に事故が起きていない状態ではありません。変化や予想外の出来事に対応しながら、仕事を安全に進め続ける力です。
レジリエンスとは、変化に対応する力
レジリエンスとは、変化や想定外の出来事が起きても、状況を把握し、必要な対応を取り、立て直していく力です。
現場においては、次のような力が求められます。
危険の兆候を早く察知する力。
状況が変わった時に作業を見直す力。
仲間と情報を共有する力。
異常が起きた時に被害を広げない力。
経験から学び、次の仕事に生かす力。
この力は、一人の優秀な人だけで作れるものではありません。
職長、作業員、協力会社、管理者が、それぞれの立場で気づいたことを出し合い、調整し、支え合うことで現場のレジリエンスは高まります。
最終的に事故を防ぐのは、人である
原子力発電所のような高度に自動化された設備でも、異常時には人が状況を認知し、判断し、必要な操作を行うことが前提になります。設計上も、運転員が事象を認知して操作を判断するための時間的余裕として、少なくとも10分間を見込む「10分ルール」が用いられてきました。
機械は正確です。疲れません。決められた条件なら、確実に動きます。
しかし、機械は現場の空気を読みません。
作業員の疲れや焦りには気づきません。
「何かがおかしい」という違和感を持つこともありません。
どんなに機械やAIが進歩しても、最終的に状況を見て、危険を感じ、作業を止め、仲間に伝え、判断するのは人です。
私が求める安全は、「人が起こす事故を、人が防ぐ」ことです。
人は間違えます。だからこそ、人が支え合う。
人は見落とします。だからこそ、仲間が声を掛ける。
人は迷います。だからこそ、止まって確認できる仕組みを作る。
安全大会の講話を通じて、一人ひとりが安全を「誰かに守ってもらうもの」ではなく、「自分たちで作るもの」と感じていただければと思います。
安全大会・安全講話のご相談について
濵口労働安全コンサルタント事務所では、建設現場、工場、協力会社安全大会など、それぞれの業種や参加者に合わせた安全講話を行っています。
ヒューマンエラー、心理的安全性、コミュニケーション、安全文化、SafetyⅠ・SafetyⅡ、レジリエンスなど、現場で活用できる内容を分かりやすくお伝えします。
「安全大会で、いつもと少し違う話をしてほしい」
「作業員が自分のこととして考えられる講話にしたい」
「管理者向けに、安全管理を一段深く学びたい」
そのようなご要望にも対応しています。
安全は、知識だけでは守れません。
人の特性を理解し、人が安全に働ける現場を作ること。
それが、事故を防ぎ、仲間を守り、会社を守ることにつながります。