
私のエラーで正常性バイアスの前に同調バイアスを掲載してしまいました。書き貯めて公開を行う方法を取っていたため正常性バイアスが画面の下の方にあり、気づかないで、同調性バイアスを公開してしまいました。
私はこれから「バイアス」について、できるだけ身近な例を交えながらお話ししていきます。
バイアスとは、簡単に言えば「ものの見方や考え方の偏り」のことです。
「偏り」と聞くと悪いもののように感じますが、実はそうではありません。
人は毎日、数え切れないほどの判断をしています。
車を運転する。
自転車に乗る。
階段を上る。
電車に乗る。
もし「事故が起きるかもしれない」と毎回本気で考えていたら、安心して生活することはできません。
だから人の脳は、「普段は大丈夫だろう」と考えることで、不安を抑え、日常生活を送れるようにしています。
これが正常性バイアスです。
つまり、正常性バイアスは私たちが普通の生活を送るために欠かせない、とても大切な心の働きなのです。
しかし、この正常性バイアスは、災害や事故などの非常時になると、まったく逆の働きをしてしまうことがあります。
「まだ大丈夫だろう。」
「自分だけは大丈夫。」
「今まで何もなかったから今回も大丈夫。」
このように危険を過小評価してしまい、避難が遅れる原因になるのです。
その代表的な事例が、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)です。
岡山県倉敷市真備町では堤防が決壊し、市街地が広い範囲で浸水しました。避難情報が発令されていたにもかかわらず、多くの方が自宅に留まり、結果として52名もの尊い命が失われました。
もちろん、避難できなかった理由は正常性バイアスだけではありません。夜間だったこと、高齢者が多かったこと、避難手段の問題など、さまざまな要因が重なっています。
しかし、防災心理学では、「まだ大丈夫」という正常性バイアスが避難の遅れを招く大きな要因の一つであることが指摘されています。
重要なのは、正常性バイアスをなくすことではありません。
普段は私たちの生活を支えてくれる大切な心の働きだからです。
大切なのは、
「今、自分は正常性バイアスの影響を受けていないだろうか。」
と、一度立ち止まって考えることです。
自分を少し離れたところから見つめ直す「メタ認知」ができれば、正常性バイアスに気付き、適切な判断につながります。
安全とは、危険をゼロにすることではありません。
人間の心理を理解し、その心理とうまく付き合うことこそが、安全への第一歩なのです。
バイアスは、人間が効率よく生きるために身につけた「心の仕組み」です。だから、なくすことはできません。しかし、自分がどのようなバイアスの影響を受けているのかを知ることで、一度立ち止まり、より良い判断をすることはできます。安全とは、人を変えることではなく、人を理解することから始まります。
参考資料
- 菊池 聡「災害における認知バイアスをどうとらえるか―認知心理学の知見を防災減災に応用する―」
- 小松秀徳・杉山大志「リスク認知バイアスの進化心理学的な解釈」