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「そんなことをするから事故になる」は本当なのか?

バイアス

2026.07.24

~後知恵バイアスが事故原因を見えなくする~

事故が起きた後、私たちはついこう考えてしまいます。

「そんな危険なことをするから事故になるんだ。」
「なぜあんなことをしたのか。」
「自分なら絶対にしない。」

しかし、この考え方こそが後知恵バイアスです。

後知恵バイアスとは、結果を知った後で、「最初からそうなることは分かっていた」と思い込んでしまう心理です。

事故が起きた後は、事故という結果が分かっています。そのため、事故に至るまでの過程よりも、「結果」に意識が向いてしまいます。

しかし、本当に知るべきなのは結果ではありません。

その人は、その時、なぜその行動を選んだのか。

そこに事故防止の答えがあります。

例えば建設現場で脚立から転落した作業者がいたとします。

事故報告書には、

「脚立の天板に乗ったため転落した。」

と書かれるかもしれません。

しかし、それだけでは事故は防げません。

その日は工期に追われていたのかもしれません。

暑さで集中力が低下していたのかもしれません。

「少しだけだから大丈夫」という楽観性バイアスが働いていたのかもしれません。

あるいは、周囲も同じような作業をしていて、それが当たり前になっていたのかもしれません。

つまり、その人を取り巻く環境・心理状態・組織の雰囲気を理解しなければ、本当の原因は見えてきません。

事故調査で「ルール違反だった」「不注意だった」と結論づけるのは簡単です。

しかし、それでは同じ事故は繰り返されます。

事故は、人だけが原因ではありません。

人と環境、人と組織、人と仕事のやり方が重なった結果として発生します。

SafetyⅡでは、「人は失敗する存在」であると同時に、「人は毎日事故を防いでいる存在」でもあると考えます。

だからこそ事故が起きた時は、「誰が悪かったのか」を探すのではなく、

「その人なら、その場ではそう判断してしまう環境ではなかったか。」

という視点で振り返ることが重要です。

後知恵バイアスに気づくことは、人を責める安全管理から、人を理解する安全管理への第一歩になります。

事故を防ぐために必要なのは、結果を責めることではありません。

結果ではなく、その瞬間の「人の見えていた世界」を理解すること。

そこに、本当の再発防止があります。

参考資料

・菊池 聡「災害における認知バイアスをどうとらえるか―認知心理学の知見を防災減災に応用する―」

・小松秀徳・杉山大志「リスク認知バイアスの進化心理学的な解釈」

災害事例は、事故を起こした人を責めるためのものではありません。自分にも起こり得る出来事として学ぶためにあります。「私は大丈夫」と思った瞬間から、事故への扉は開いてしまうのです。

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