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「自分だけは大丈夫」が事故を招く ― 楽観性バイアスとは

バイアス

2026.07.23

これまで正常性バイアス、確証バイアス、同調性バイアスについて紹介してきました。

今回は「楽観性バイアス(Optimism Bias)」です。

楽観性バイアスとは、

「悪いことは自分には起こらない」と無意識に考えてしまう心理です。

決して「前向きな考え方」が悪いという意味ではありません。

未来に希望を持つことは、人が生きていくうえでとても大切です。

しかし、安全の世界では、この楽観性が事故につながることがあります。

実際、災害心理学でも「自分は被害を受けない」という考えが避難の遅れにつながることが指摘されています。

日常にもある楽観性バイアス

例えば車を運転していて、

「今日は疲れているけれど大丈夫。」

「スマホを少し見るくらいなら問題ない。」

そんな経験はありませんか。

また健康診断で再検査と言われても、

「まだ大丈夫。」

「来年受ければいい。」

と先延ばしにする人も少なくありません。

台風が近づいていても、

「今まで大丈夫だったから今回も大丈夫。」

と思ってしまうのも楽観性バイアスです。

実際には事故や病気は誰にでも起こる可能性があります。

しかし人は、自分だけは例外だと考えやすいのです。

建設現場ではどう現れるのか

建設現場では、このバイアスは非常に危険です。

例えば、

  • 「安全帯を掛けなくても数分だから大丈夫。」
  • 「脚立を少し横へ乗り出しても落ちない。」
  • 「今日は暑いけど、自分は熱中症にならない。」
  • 「この重機は何年も運転しているから事故は起きない。」

このような考えは、事故を経験していないからこそ生まれます。

事故が起こらなかった経験が積み重なるほど、

「今回も大丈夫。」

という自信に変わっていきます。

しかし事故とは、

「大丈夫だった日」の延長線上で突然起こるものです。

だからこそ、経験豊富なベテランほど注意が必要なのです。

楽観性バイアスは悪いものではない

実は、このバイアスがなければ人は毎日不安で生活できません。

「事故に遭うかもしれない。」

「病気になるかもしれない。」

「失敗するかもしれない。」

そんなことばかり考えていたら、自転車にも乗れず、新しいことにも挑戦できません。

つまり、

楽観性バイアスは、人が前向きに生きるために必要な心の働きでもあります。

ただし、安全管理では話が変わります。

危険を前にしたときだけは、

「自分も事故に遭うかもしれない。」

という視点を持つことが重要になります。

安全管理に必要なのは「自分も例外ではない」という意識

事故は、不注意な人だけが起こすものではありません。

真面目な人も、経験豊富な人も事故に遭います。

だから現場では、

  • 指差呼称をする。
  • KY活動を行う。
  • 危険予知を共有する。
  • ダブルチェックを行う。

これらは技術ではなく、

楽観性バイアスを打ち消すための仕組みでもあります。

「自分だけは大丈夫。」

そう思った瞬間が、一番危険なのかもしれません。

まとめ

楽観性バイアスは、人が前向きに生きるためには必要な心理です。

しかし、安全の世界では事故を招く原因にもなります。

事故は「自分には起こらない」と思った瞬間から始まります。

だからこそ、安全管理で最も大切なのは、

「自分も例外ではない」という視点を持つこと。

それが、自分の命を守り、仲間の命を守る第一歩になるのです。


参考資料

  • 菊池 聡「災害における認知バイアスをどうとらえるか ― 認知心理学の知見を防災減災に応用する」
  • 小松秀徳・杉山大志「リスク認知バイアスの進化心理学的な解釈」

バイアスを完全になくすことはできません。

しかし、バイアスについて知っていれば、「今の自分は、バイアスに影響されているのではないか」と気付くことができます。

その時に大切なのが、Stop・Look・Thinkです。

まず立ち止まる。
次に、自分の考えや周囲の状況を見直す。
そして、別の見方や判断がないかを考える。

このように、自分の考えを一歩引いて見つめ直すことがメタ認知です。

バイアスを知ることは、単に心理学の用語を覚えることではありません。自分の判断を見直し、より安全な行動につなげるために必要なのです。

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