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第3回 同調バイアスとは「空気に合わせること」なのか

バイアス

2026.07.22

前回までの記事では、高野陽太郎先生の研究をもとに、「日本人は特別に同調性が高い民族ではない」ということを紹介しました。

では、私たちが職場や日常で感じる「みんな空気を読んでいる」「誰も反対意見を言わない」という現象は、何なのでしょうか。

今回は、その正体について考えてみます。

会議で反対意見が出ない理由

多くの会社では、会議になると発言する人がある程度決まっています。

経験豊富な人、役職者、声の大きい人の意見が中心となり、会議が進んでいくことは珍しくありません。

一方で、

「私は違う考えだけど…」
「危ないと思うけど言いにくい。」

そう感じながらも、何も発言しない人もいます。

その結果、反対意見が出ることなく会議は終わり、

「全員が賛成した。」

という結論になってしまいます。

しかし、本当に全員が賛成していたのでしょうか。

同調と心理的安全性は違う

ここで大切なのが、「同調」と「心理的安全性」を区別して考えることです。

同調とは、自分の考えよりも周囲に合わせようとする心理です。

一方、心理的安全性とは、

「自分の考えを安心して発言できる環境があるかどうか」

という組織の状態を表します。

つまり、

「周りに合わせたい。」

のではなく、

「言いたいけれど言えない。」

という状態であれば、それは心理的安全性の問題なのです。

沈黙は承認になってしまう

組織では、

「反対意見がない=全員が賛成している」

と受け取られることがあります。

つまり、

沈黙は承認

として扱われてしまうのです。

そのため、本当は危険だと思っていても発言しなければ、「全員が納得した」と判断されます。

広い意味では、これも周囲に合わせた「同調」と見ることができるかもしれません。

しかし、その背景には、

「発言すると否定されるかもしれない。」
「雰囲気を壊したくない。」
「自分だけ反対するのは嫌だ。」

という心理が存在していることも少なくありません。

安全の現場でも同じことが起こる

建設現場でも、

「危ないと思いました。」
「少し気になりました。」

という声が、事故の後になって聞かれることがあります。

もし、その一言が作業前に言えていたら、事故は防げたかもしれません。

事故の原因を「同調バイアス」と一言で片付けるのは簡単です。

しかし実際には、

  • 心理的安全性が低かった。
  • 反対意見を言いにくい雰囲気だった。
  • 周囲も何も言わなかった。
  • 「大丈夫だろう」と考えてしまった。

このように、さまざまな心理が重なって事故は起こります。

安全な職場とは

安全な職場とは、ルールが多い職場ではありません。

「危ないと思います。」

この一言が誰でも言える職場です。

反対意見を言っても否定されない。

質問をしても笑われない。

「分からない」と言っても責められない。

そんな環境があって初めて、人は安心して自分の考えを伝えることができます。

これが心理的安全性です。

おわりに

同調バイアスを理解することは大切です。

しかし、それ以上に大切なのは、

「なぜ人は周囲に合わせてしまうのか。」

その背景を考えることです。

もし職場で反対意見が出ないのであれば、それは社員が同調しているからではなく、安心して発言できる環境が整っていないだけかもしれません。

安全文化は、ルールだけでは育ちません。

一人ひとりが安心して「それは危険です」と言える職場づくりこそが、本当の安全への第一歩なのです。

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