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権威バイアス ~事故は「偉い人が言ったから」で起こる~

バイアス

2026.07.25

「所長が言ったから。」
「ベテランが大丈夫と言ったから。」
「先生がそう言うなら間違いない。」

私たちは日常生活の中で、このような判断を何気なくしています。

これは権威バイアスと呼ばれる認知バイアスです。

権威バイアスとは、専門家や立場のある人、経験豊富な人の意見を、内容を十分に検討することなく「正しい」と信じてしまう心の働きです。

もちろん、このバイアス自体は悪いものではありません。

もし毎回すべてを自分で調べて判断していたら、私たちの生活は成り立ちません。医師を信頼し、教師を信頼し、専門家を信頼することで、私たちは効率よく生活しています。

しかし、安全の世界では、この便利な心の働きが事故につながることがあります。

例えば建設現場。

現場所長が「今日はこの方法で行こう」と言いました。

職長も「今までこのやり方で事故はなかった」と続けます。

新人作業員は、「何か危ない気がする」と感じました。

それでも口には出せません。

「自分より経験がある人が言っているのだから間違いない。」

こうして作業は始まります。

もしその判断が間違っていたとしたら、事故は防げたはずなのに、防ぐ機会を失ってしまいます。

ここで興味深いのは、事故は一つのバイアスだけでは起こらないということです。

権威バイアスが働くと、「偉い人が言うなら正しい」と考えます。

すると、周囲も従うため同調性バイアスが働きます。

さらに、「今まで事故がなかったのだから今回も大丈夫」と正常性バイアスが加わります。

そして、「事故になるのは他人で、自分は大丈夫」と楽観性バイアスまで働きます。

事故が起きた後になると、「そんな危険なことをするから事故になるんだ」と後知恵バイアスによって結果だけを見て判断してしまいます。

つまり、一つひとつのバイアスが数珠つなぎのようにつながり、最後に事故という結果が生まれるのです。

私は、この「バイアスの連鎖」こそが、安全管理で最も重要な視点ではないかと考えています。

事故原因を一つだけ探しても、本当の原因にはたどり着けません。

その時、人はどのような心理状態だったのか。

どのようなバイアスが重なったのか。

そこまで見えて初めて、同じ事故を防ぐことができます。

SafetyⅡでは、「人は失敗する存在」ではなく、「人は状況に応じて最善と思う判断をしている存在」と考えます。

だからこそ、事故が起きた時には「誰が悪かったか」を探すのではなく、「どのような認知バイアスが重なっていたのか」を考えることが、安全文化を育てる第一歩になるのです。

事故は、一つの原因で起こるものではありません。

そして、認知バイアスも一つだけで働くものではありません。

バイアスの数珠つなぎに気付くこと。

それが、安全を見る新しい視点なのではないでしょうか。

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