
― 豊川市への安全パトロールで気づいたこと ―
一昨日(6月9日)は愛知県豊川市へ安全パトロールに向かっていました。
朝、新神戸駅で列車を待ちながら、自分自身のヒューマンエラーに気づきました。
当初の計画では、新神戸から名古屋まで新幹線を利用し、その後、豊橋までは東海道本線の快速列車を利用する予定でした。
ところが、切符を購入する際に帰りの時刻を確認すると、豊橋から直接新幹線を利用できることが分かりました。
「それなら行きも豊橋まで新幹線を利用した方が早くて楽だな」
そう考えて予定を変更しました。
ところが、出発時刻を見直してみると、新幹線を利用することで自宅を出る時間をかなり遅らせることができたにもかかわらず、私は当初の計画で考えていた時間に合わせて行動してしまい、新神戸駅に約1時間も早く到着してしまったのです。
もちろん大きな問題ではありません。
しかし、この小さな出来事の中にヒューマンエラーの本質が隠れています。
人は最初に決めた計画に引っ張られる
心理学では「アンカリング効果」と呼ばれる現象があります。
最初に得た情報や最初に立てた計画が基準となり、その後の判断に影響を与える現象です。
私の場合、
「この時間に家を出る」
という最初の計画が頭の中に強く残っていました。
移動手段が変わり、出発時間も変更できる状況になったにもかかわらず、脳は最初の計画を基準として行動してしまったのです。
システム1は変更が苦手
ノーベル経済学賞を受賞したカーネマンは、人間の思考をシステム1とシステム2に分けて説明しています。
システム1は直感的で素早く判断します。
一方、システム2はゆっくり考え、論理的に判断します。
今回の私は、
「いつもの流れ」
「最初に決めた予定」
をシステム1がそのまま実行してしまいました。
本来なら、
「新幹線利用になったのだから出発時間も見直そう」
とシステム2を働かせる必要がありました。
しかし、人間は忙しい時ほど省エネで考えようとします。
その結果、変更後の計画を十分に確認しないまま行動してしまうのです。
建設現場でも同じことが起きる
この現象は建設現場でもよく見られます。
例えば、
・作業手順が変更された
・重機の配置が変わった
・資材置場が変更された
・作業員の担当が変わった
にもかかわらず、昨日までのやり方で行動してしまう。
本人は間違っているつもりはありません。
むしろ「いつも通り」に行動しているだけです。
しかし、その「いつも通り」が事故につながることがあります。
ヒューマンエラーは能力不足ではない
私は今回、新神戸駅で1時間待つことになりました。
この経験から改めて感じたのは、
ヒューマンエラーは能力不足で起きるのではない
ということです。
人間の脳が本来持っている特性によって発生するのです。
だからこそ、
「注意しろ」
だけではエラーはなくなりません。
変更点を確認する仕組みを作る。
立ち止まって考える時間を設ける。
仲間同士で確認し合う。
こうした仕組みが重要になります。
おわりに
幸い今回のヒューマンエラーは、新神戸駅でコーヒーを飲む時間が増えただけでした。
しかし、人間の脳の特性は、日常生活でも建設現場でも同じです。
大きな事故も、小さな失敗も、根っこにある仕組みは意外と似ています。
安全とは、人間を責めることではありません。
人間の特性を理解し、その特性とうまく付き合う仕組みを作ることです。
新神戸駅での1時間の待ち時間は、そんなことを改めて考えさせてくれました。