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太平洋高気圧・チベット高気圧、そして都市部のヒートアイランド
今年の夏は、例年以上に高温への注意が必要になりそうです。
気象庁は、2026年春からエルニーニョ現象が発生しているとみられると発表しています。エルニーニョ現象は、太平洋赤道付近の海面水温が高い状態が続き、大気の流れや世界各地の天候に影響を与える現象です。
ただし、「エルニーニョだから日本は冷夏になる」と単純には考えられません。
日本の夏の暑さは、太平洋高気圧、チベット高気圧、偏西風、海面水温、積乱雲の発達など、さまざまな要素が重なって決まります。実際に、太平洋高気圧とチベット高気圧が日本付近で重なると、記録的な高温になることがあります。
昔の「小笠原高気圧」は、今の太平洋高気圧
子供のころ、夏の高気圧は「小笠原高気圧」と習った方も多いと思います。
現在の天気予報では、一般に「太平洋高気圧」と呼ばれます。小笠原諸島付近から張り出す暖かく湿った空気の塊であり、夏の日本を覆う代表的な高気圧です。
太平洋高気圧が日本付近まで強く張り出すと、晴天が続き、日差しが強くなります。地上付近では暖かく湿った空気に覆われ、気温が上がります。
一方、上空には別の高気圧があります。それがチベット高気圧です。
上空からも暑さを押さえつけるチベット高気圧
チベット高気圧は、地上の太平洋高気圧とは違い、上空およそ12kmから16km付近にできる高気圧です。
インドやチベット高原、フィリピン付近などで積乱雲の活動が活発になると、上空に暖かい空気が広がり、チベット高気圧が強まります。偏西風が北へ蛇行するなどの条件が重なると、この高気圧が日本付近まで張り出します。
太平洋高気圧が地上付近から暑い空気を送り込み、チベット高気圧が上空から空気を押さえ込む。
この二つが重なると、空気は下向きに流れやすくなります。雲ができにくくなり、強い日差しが地面を熱し続けます。
よく「高気圧が二枚重なった状態」と表現されますが、まさに地上と上空の両方から暑さを閉じ込めるような状態です。
晴天が続き、昼間の気温が上がるだけではありません。夜になっても気温が下がりにくくなり、熱帯夜が増えやすくなります。
都市部ではヒートアイランドがさらに暑さを加える
特に注意が必要なのは都市部です。
都市では、アスファルトやコンクリートの道路・建物が日中の熱をため込みます。さらに、自動車、工場、エアコン室外機などから出る人工排熱も、周囲の空気を暖めます。
建物が密集した場所では風が通りにくく、昼間にたまった熱が夜まで残ります。そのため、都市部では周辺の郊外よりも気温が高くなりやすく、夜間も気温が下がりにくくなります。これがヒートアイランド現象です。
気象庁も、太平洋高気圧やチベット高気圧による夏の高温に加え、都市部ではヒートアイランド現象によって、さらに気温が高くなりやすいと説明しています。
現場で考えると、同じ気温予報でも、
・ビルに囲まれた場所
・交通量の多い道路沿い
・アスファルト舗装の広い駐車場
・屋上や鉄骨の上
・風が抜けにくい狭い作業場所
では、体が感じる暑さはさらに厳しくなります。
気温だけで「今日は大丈夫」と判断してはいけません。
熱中症対策は「暑くなってから」では遅い
高温による熱中症は、真夏の昼間だけに起こるものではありません。
朝から気温が高い日、湿度が高い日、風が弱い日、夜間の気温が下がらなかった翌日などは、体に疲労が残りやすく、熱中症の危険が高まります。
特に都市部では、夜間も気温が下がりにくいため、十分に睡眠を取れず、翌日の体調不良につながることがあります。
現場では、次のことを当たり前にしておく必要があります。
・作業開始前に暑さ指数(WBGT)を確認する
・水分だけでなく塩分も補給する
・休憩を後回しにしない
・日陰や冷房のある休憩場所を確保する
・体調が悪い人を無理に作業させない
・一人で我慢させず、早めに声をかける
・作業計画そのものを暑さに合わせて変更する
暑さ対策は、個人の根性や注意力に任せるものではありません。
気温、湿度、日射、風、作業内容、服装、体調、睡眠不足など、さまざまな条件が重なって熱中症は起こります。
今年の夏は、太平洋高気圧とチベット高気圧の重なりに加え、都市部ではヒートアイランド現象も加わります。
「暑いから注意する」ではなく、
「暑くなる前に、作業と休憩の仕組みを整える」。
これが、現場で働く人の命を守るために必要な考え方です。