
「歩くのが速い人は仕事ができる。」
このように言われることがあります。
しかし、現在の心理学では、「歩くのが遅い人は仕事ができない」と結論付けることはできません。
年齢や体力、健康状態など、歩く速さにはさまざまな要因が影響するからです。
それでも私は、仕事ができる人には一つの共通点があるように感じています。
それは、
「常に次を考えながら行動していること」
です。
歩くことは情報処理の連続
人は歩いているだけでも、多くの情報を処理しています。
- 前から来る人との距離
- 段差や障害物
- 信号や車の動き
- 次に向かう場所
歩く速度が少し速くなるだけでも、これらを短時間で判断しなければなりません。
つまり、歩くことは単なる移動ではなく、
「見て・考えて・判断して・行動する」
という認知活動の繰り返しなのです。
もちろん、歩くことだけで情報処理能力が向上すると証明されているわけではありません。
しかし私は、日々このような情報処理を繰り返すことが、「次を考える習慣」を育てているのではないかと考えています。
四国八十八ヶ所で学んだこと
私は四国八十八ヶ所の歩き遍路を経験しました。
毎日約30km。
歩数にすると5万歩近くになります。
一日中歩いていると、不思議な感覚になります。
歩き始めは道を確認し、今日の予定を考えています。
しかし、しばらく歩き続けると、必要なのは道を確認することだけになります。
それ以外の意識は、自然と「無」になっていくのです。
遍路では「同行二人(どうぎょうににん)」という言葉があります。
弘法大師と一緒に歩いているという考え方です。
私も、そのような気持ちで歩いていました。
長い時間歩いていると、頭の中の雑念が消え、本当に必要なことだけが残っていくような感覚がありました。
「無」になることは思考を止めることではない
「無になる」と聞くと、何も考えていないように思われるかもしれません。
しかし、実際にはそうではありません。
必要な情報だけを受け取り、それ以外の雑念が消えている状態です。
だからこそ、
- 自分を振り返る。
- 今日の出来事を整理する。
- 次の仕事を考える。
- 新しいアイデアが浮かぶ。
そんな時間にもなります。
私は、この「心の余白」が非常に大切だと感じています。
レジリエンスは「次を考える力」
私は、安全の世界で最も重要な能力の一つがレジリエンスだと考えています。
レジリエンスとは、失敗しない能力ではありません。
予期しない出来事が起きたときに、
「では、次はどうする。」
と考えられる力です。
建設現場でも、予定どおりに進む日はほとんどありません。
天候が変わる。
資材が届かない。
機械が故障する。
そのたびに、立ち止まるのではなく、「次の一手」を考える人が現場を前へ進めています。
私は、この力は特別な才能ではなく、日々の習慣の積み重ねで育つものだと思っています。
歩いているときも、
仕事をしているときも、
「次は何をするか。」
そんな思考を持ち続けることが、レジリエンスを育てるのではないでしょうか。
今日からできること
歩く速さを競う必要はありません。
大切なのは、
目的を持って歩くこと。
そして、
次を考えながら歩くこと。
私は四国八十八ヶ所を歩いて学びました。
長い道のりを歩き続けるために必要なのは、速さではありません。
一歩一歩を積み重ねながら、道を確認し、心を整え、次を考え続けることです。
その積み重ねが、人生でも仕事でも、予期しない出来事に対応する力、つまりレジリエンスを育ててくれるのだと思います。
最後に、私がいつも大切にしている言葉を紹介します。
Stop・Look・Think
立ち止まり(Stop)、
自分や周囲を見つめ(Look)、
そして次の一手を考える(Think)。
歩くという何気ない日常の中にも、自分を成長させるヒントは隠れています。
「次を考える習慣」が、未来の自分をつくり、安全な行動へとつながっていく。
私は、そう信じています。